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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第6章 因縁に終止符を

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第114話 動き出す仲間たち②


《イヴァン・スコティッシュ視点(Side)


「……ああ」


 僕は短く返事をすると、ひと呼吸置き――


「オードラン男爵を陥れた者の正体……それはおそらく、エルザ・ヴァルランド第三王女だろう」


「え……えぇ!?」


「な、なんだとッ!?」


 驚愕の声を上げたのはシャノアとローエンの二人。

 この二人は謀略や政治にめっぽう疎いから、驚くのも無理はない。


 僕は話を続け、


「実は、以前から少しずつ調べ始めてはいたのだ。僕にとって怨敵である〝串刺し公(スキュア)〟の飼い主が誰なのか……な」


 務めて落ち着いた口調で、僕は淡々と話していく。


 ――そう、我が怨敵〝串刺し公(スキュア)〟。

 いつか必ず、奴に報いを受けさせてくれると思って。


「奴を暗躍させて数々の姦計を巡らせ、王立学園へも容易に入り込んで事件を起こせるほどの権力を持つ人物……そんな真似ができる者は、必然的に限られる」


「「「…………」」」


「相手は極めて高い権威と権力を持つ人物――その前提でオードラン男爵批判派に属していた貴族たちの周辺調査を行った結果、浮かび上がったのが第三王女だったというワケさ」


「へぇ? そこまで調べてたんなら、もう復讐まで秒読みだったって感じか?」


 マティアスがいつも通りの軟派そうな笑みを浮かべ、僕に聞いてくる。


 対して僕は「フン」と鼻を鳴らし、


「……できるモノなら、とっくにやっていたとも」


「ま、そりゃそうだよな……。第三王女相手に復讐なんて、自殺行為以外のなにものでもねーわ」


「………………許さない」


 これまで無言を貫いてきたカーラが、突然ボソッと呟く。


「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない……。イチャイチャな夫婦の甘ラブ生活を、権力者が謀略で踏みにじるなんて……!」


「カ、カァー!」


「第三王女は、決してやってはならぬことをした……! ならば〝死〟あるのみ……!」


 ――悪鬼羅刹さながらに目を血走らせ、怒りに身を震わせるカーラ。


 全身に負のオーラが満ち溢れ、長い黒髪が重力に逆らってユラリと浮遊。

 明らかに彼女の周囲だけ空間が歪んでいる。


 恐ろし過ぎるだろう……。

 ダークネスアサシン丸すらも怯えているぞ……。


「カ、カーラ……キミは国王の懐刀たるレクソン家の一員だろう? その発言はマズいんじゃないのか……?」


「関係ない……! 第三王女の行いはレクソン家の〝教義〟に悖る! 許すまじ!!!」


 呪怨にまみれた恨みつらみを隠そうともしないカーラ。


 ……キミの言うレクソン家の〝教義〟とは一体……?

 そんなことを思ったりしたが、尋ねるのはやめておいた。

 話が無駄に長くなりそうだな、と思って。


「と・も・か・く! ですわ!」


 一瞬折れそうになった話の腰であったが、その空気をエステルが矯正。


「お相手はハッキリしましたわね! だったら後は()るか()らないか、二つに一つ!」


「……そうだな。エステル、キミはどちらを選ぶんだ?」


「ハァ? わかり切ったことを聞くんじゃねーですわよ」


 エステルは縦ロールに巻かれた髪を優雅に手で払うと――腰に両手を当て、堂々と胸を張る。


「いいこと? 私はね、真の〝お嬢様〟を目指しているの。そして真のお嬢様とは権威や権力ではなく、心の気高さを持つ本当の淑女……。本当の淑女は、(ダチ)の泣く顔を見て黙っていたりしませんの」


「その(レティシア)のために、キミが築いてきた全てを失うとしても――か?」


「当然。私は、腐っても鯛でいたい……例え腐り堕ちようとも〝お嬢様〟でいたいんですのよ」


「……フッ、なるほど。実にキミらしいな」


 彼女の誇り高い言葉を受け、僕は改めてFクラス全員を見渡す。


「僕もエステルと同じ気持ちだ。オードラン男爵を見捨てるつもりはない。キミたちはどうする」


「それさー、改めて聞くぅ?♣」


 ニヤリと笑ってラキが言った。

 その瞳に、力強い意思を宿して。


 いや――ラキ一人だけではない。

 シャノアも、ローエンも、カーラも、エステルも、マティアスも――この場にいる全員が、同じく瞳に意志を宿している。


 続けてマティアスが口を開き、


「ま、全員同じ気持ちってこった。俺の嫁(エイプリル)も同じことを言うだろうよ」


 不敵な笑みを浮かべて言う。

 まったく、新婚ホヤホヤの男が言う台詞ではないだろうが――その気持ち、無駄にはできまい。


「ならば――決まりだ」


 マティアスに合わせるように、僕も口元に不敵な笑みを浮かべた。


「すぐに動こう。モタモタしていては手遅れになる。まずはオードラン男爵を監獄から助けだして――」


「――待って」


 さっそく作戦会議に入ろうとした僕を、女性の声が呼び止める。


 その声に誘われるように背後へ振り向くと――そこには、レティシア嬢の姿があった。


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