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【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】  作者: メソポ・たみあ
第6章 因縁に終止符を

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第110話 王家特別親衛隊


 王家を守る者の証である金鷲勲章を胸元に備えた、〝王家特別親衛隊〟――。


 騎士階級の者たちで構成されながら、王国騎士団には属さず独立した組織体系を持つ精鋭部隊。


 彼らはあくまでヴァルランド王家直轄の部隊であり、王家の完全なる独断で動かせる唯一の部隊とも言われる。


 その名が示す通り、国王や王家の人間を護衛するのが主任務。

 だが王家に仇成す反乱分子を積極的に監視・鎮圧したり、場合によっては民衆への弾圧行為も辞さないなど、その実態は国家公安組織に近い。


 騎士の中でも秀でた強さを持ち、尚且つ王家への高い忠誠心を持つ者だけがなれるエリート。

 それが〝王家特別親衛隊〟――なんだとか。


 ……で、そんな〝王家特別親衛隊〟が剣と軽装甲冑で武装して、五人編成でクラスの中に押し入ってくる。


 少なくとも授業風景の見学に来たって感じではないな。


「……」


 五人組の先頭に立つ、目元に傷痕を持った隊長らしき男。

 年齢は比較的若そうだが精悍な顔つきで、如何にも武人って風貌だ。


 彼はチラッとパウラ先生(・・・・・)の方を見た後、キョロキョロと教室の中を見回す。

 そして俺に視線を合わせると、


「貴殿がアルバン・オードラン男爵だな?」


「ああ、そうだけど」




「――貴殿に〝王家への叛逆〟の疑いありという報せを受けた。只今を以て、貴殿の身柄を拘束させて頂く」




「「「――ッ!?!?」」」


 隊長が放った言葉に、Fクラスの全員が騒然とする。


 中でも血相を変えたのはレティシアだ。


「ま、待って頂戴! アルバンは――私の夫は、王家への叛逆など企んでいないわ!」


「その真偽を決めるのは、我々ではなく裁判官の仕事だ」


「は~い! ちょっとストップ~!」


 パウラ先生が教壇から降り、二人の会話に割って入ってくる。

 いつものニコニコ笑顔を崩さずに。


「久しぶりだね~ホラントくん! 元気そうでなにより!」


「……お久しぶりです、先輩(・・)


「少し逞しくなったかな? それと、だいぶ強くなった(・・・・・)みたいだね!」


「ええ……先輩にご指導頂いていた頃から、もう何年も経ちましたから」


「うんうん、しっかりお役目を果たしているようで大変よろしい! ところで、アルバンくんの拘束令状は?」


「こちらに」


 ホラントという隊長は部下が持っていたケースから一枚の用紙を取り出すと、パウラ先生に手渡す。


 パウラ先生はその用紙を「ふんふん」と眺めて、


「ファウスト学園長への連絡は?」


「既に通達済みです。ウィレーム・バロウ公爵やユーグ・ド・クラオン閣下へも、あと一時間程度で連絡が行くでしょう。一足先に踏み込ませて頂きました」


「うんうん、教えた通りにできてるね! なら仕方ない!」


 パウラ先生は俺の方へと振り向いて、


「ごめんねアルバンくん! 先生、今はキミのことを助けられそうにありません!」


 ニコニコ笑顔で言った。


 いや、助けろよ。

 あっさり見捨てないでくれよ。

 アンタ腐っても担任の先生だろうが。


 あまり悪びれる様子のないパウラ先生に、思わず内心で悪態が漏れてしまう俺。


 っていうか、パウラ先生って〝王家特別親衛隊〟の騎士と知り合いなのか?

 今の会話を聞くと、まるで――。


 などと思っている内に、ホラントという隊長は俺のすぐ傍までやって来る。


「では、アルバン・オードラン男爵。大人しく付いて来てもらおう」


 籠手(ガントレット)に守られた腕が、俺の肩を掴む。

 刹那――。


「俺に、触るな」


 俺はホラントを、殺意に満ちた目で睨み付ける。


 この腕、今すぐ斬り落としてくれようか――そう視線で伝えるように。


「……ッ!」


 ホラントは思わず手を放し、後ずさりする。

 同時に、その背後で固まる〝王家特別親衛隊〟の連中。


「俺とレティシアを引き離そうとするとは、いい度胸だな」


 〝王家への叛逆〟、ね……。

 言っとくが、俺はまだそこまで過激なことは考えていない。


 だって面倒だし、なによりレティシアが嫌がるから。

 だから少なくとも、今はまだ冤罪だ。


 そう――今は、まだ。


 だが……俺とレティシアを引き離そうとするってんなら、それも真実となる。


 王家?

 〝王家特別親衛隊〟?

 そんな肩書き、俺にはなんの意味もない。


 俺とレティシアの幸せを邪魔するなら、全て敵だ。


 だから全て滅ぼす。

 なにもかも滅ぼす。

 なにもかも、だ。


 それに、これ(・・)を手引きした奴の正体も大方察しがつく。


 いつも、いつもいつもいつもいつもいつもレティシアを付け狙ってくる、例の王女――。

 本当にウザったくて堪らなかったが……いよいよ権力を笠に着て、本腰入れて俺たちを潰しに来たってか。


 ……上等だよ。

 そっちがその気なら、お遊びは終わりだ。


「殺す」


 剣を手に、椅子から立ち上がる。

 まずは目の前から始めてやろう、と。


 コイツら〝王家特別親衛隊〟を名乗るだけあって、ただの雑魚じゃなさそうだ。


 特にホラントって奴はまあまあ強い。

 パウラ先生も見抜いてたが、気配が強者のそれだ。


 でも――やっぱりレオニールほどじゃない。

 アイツの方がずっと強い。

 

 とはいえ五対一。

 油断すれば片腕一本くらいは危ういかもな――なんて思っていると、


「……オードラン男爵、さっさと逃げな」


 マティアスが立ち上がる。

 自身の得物である槍を手に。


「ヘヘ、どうやら借りを返すタイミングがやって来たってワケだ」


「そうだな。僕たちで時間を稼ごう」


 続いてイヴァンが立ち上がる。

 剣を片手に持って。


「王家に逆らうなど全く不本意だが、今の僕にとっての〝(キング)〟はオードラン男爵だ。僕には〝(キング)〟を守る義務がある」


 さらに続くようにエステルが立ち上がり、


「あらあら、仕方のねー殿方たちですこと。 まあ? 私も? 丁度ド派手なお喧嘩がしたかったとこでして、オーッホッホッホ!」


「じゃあウチも加勢しようっかな☆」


「わ、私も……! オードラン男爵を見捨てるなんてできません!」


「俺もだ」


「……私も」


「カァー!」


 最終的に――Fクラスの全員が、立ち上がった。

 明確な敵意を〝王家特別親衛隊〟へ向けて。


 ……なんだよお前ら。

 揃いも揃って、王家よりも俺を選ぶってのか?

 その意味がわかって――ないワケないわな。


 やれやれ……面倒くさい奴らめ。

 だが――思っていたよりもずっと、俺はいいクラスメイトに恵まれたのかもしれないね。


 Fクラスメンバーが一丸となって放たれる覇気。

 それは凄まじく、皆の気迫に当てられたホラントたちは額に冷や汗を滲ませる。


「き、貴様ら……! 総員、迎撃用――!」




「――――待って!!!」




 あわや一触即発――その空気を、レティシアの大声が破った。


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― 新着の感想 ―
[一言] 友情?戦友への信頼かな? 皆が立ち上がるのに感動して涙ぐんでしまった( ; _ ; )
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