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天道寺天真の陰陽終末戦線  作者: くろえ
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第43話 フルアーマー・オウガ

 夢から醒めた天真はオウガの操縦桿を強く握り締め、ありったけの霊力を込める。

 再び額に浮かび上がった桔梗紋。その紋様が全身に広がり、蒼く輝く頭髪が薄暗かったコクピット内を淡く照らしていく。


魂魄限界進化(ソウル・トゥ・マキシマム)。神装霊殻〈金剛装衣(ヴァジュラ・フレーム)〉を召喚。誘導ビーコン照射開始》


 陰陽連の地下基地から光の柱が立ち昇り、巨大な蓮の花を想起させる物体が出現した。それは冷泉と冬彦達、技術開発局が新たに完成させたオウガの装着型強化装甲。

 金剛装衣がオウガの直上から重なり、展開した各部位がジョイントアームによって連結する。


《全システム異常無し。ドッキング完了》


 ドッキングした新たな装甲が勢いよく蒸気を噴出させる。頭部は更なる追加装甲により、二重の牙獣型フェイスガードで覆われ、正に鬼神(オウガ)と呼ぶに相応しい顔貌となった。


「こ、これは……?」

「冷泉の置き土産じゃな。確か『増える尼』とか言っておったぞ」

「増える尼? ふえるあま……フエルアマ…………まさかフルアーマーか?」

「そう、それじゃそれ」

「全然違うじゃねえか……何だよ増える尼って。――っ!?」


 オウガが金剛装衣を装着した直後、後を追うようにして花房山から黒い巨影が飛び上がってきた。


『くそがぁ――――ッ!!』


 地下基地から姿を現した外道丸は、全身から黒焔を迸らせ怒り狂っている。油断したとはいえ霊力も持たない人間に、一瞬でも恐怖を味あわされたことに彼は激怒していた。


『あのクソ老いぼれがぁ!! 魂も喰えねえ内に消滅しやがって!! くっそ、くっそがぁ!!』

「外道丸」

『――――……』


 オウガの存在に気付いた外道丸は動きを止めた。それは致命傷を与えたはずの敵が、どういう訳か復活していたからではない。権造の抵抗から何まで、思い通りに事が進まない状況が外道丸の逆鱗に触れてしまったのだ。そして彼の堪忍袋の緒が完全に切れた。


『ブチ殺す!!』


 霊力と殺意を全開放させた外道丸がオウガへと迫る。

 権造の霊縛封呪によって消耗していたとはいえ、外道丸の霊力は凄まじいものだった。


「天真、フィールドの抑制は妾が請け負う。御主は外道丸を全力で倒せ」

「任せろ」


 天真は操縦桿を握ったまま静かに双瞼を閉じた。

 外道丸の高速機動を目で追うことは不可能。ならば霊力知覚に頼るしかない。


『ハッハァ――!! 俺の動きについてこれまい!!』


 外道丸が虚空より新たな刀を召還する。同時にオウガも童子切を抜いて迎撃の構えをとった。

 オウガは刀を構えたまま微動だにしない。この時、天真は陰陽障壁すらも展開していなかった。それは神経と霊力を極限まで研ぎ澄ませるために必要なことだった。

 亜音速で駆ける外道丸はオウガの背後をとった。


『死ね――』

「視えているぞ。お前のドス黒い霊気が」


 オウガは最小限の回避行動で外道丸の刺突を躱す。そして振り返り様に切り上げた童子切が外道丸の右腕を切断した。


『なっ……にぃ――ッ!!』

「お前は今まで戦ってきた鬼とは違う。ただ殺しを愉しんでいるだけの哀れな鬼だ」

『ぐっ、貴様らは大人しく俺に殺されてればいいんだ!』


 オウガから距離をとった外道丸が残された左手で九字を切った。


『刻め刻め刻め! 我が秋水の全てを以ちて怨敵を刻み尽くせ! オン・バサラ・アビラウンケン・ジャラ・ソワカ!!』


 外道丸の周囲に無数の光る紋様が出現する。


『これを躱し切れるかぁ!?』


 紋様から解き放たれた数多の刀剣がオウガへと襲い掛かる。


「躱す必要などない」

天刻転輪(チャクラヴァルティン)――廻始》


 オウガの天輪が急速に回転を始めると、両の拳から膨大な光が溢れ出した。その光を束ねるように合わせると、天をも貫く巨大な光刃へと変化する。


《新規追加武装を解除。拾壱番武装の神器解放》

『そ、それは親父殿の……まさかそいつは!? ま、待て! 待て待て待て!! 済まなかった! 俺が悪かったよ!! そうだ、話し合おう。俺はもう人間に手は出さねえ。俺だって好きでこんな事してるわけじゃないんだ。逢魔に乗せられただけなんだよ!! ははっ、俺だって人間と……仲良くやっていきてえよ。な? 過去の遺恨は水に流そうじゃねえか?』

「外道丸、お前が鬼だからとか……そういう問題じゃあない。お前のクズっぷりは地獄で本物の鬼に裁いてもらうんだな」

「こ、このゴミ人間(カス)がぁ――ッ!!」


 言い訳も虚しく、追い詰められた外道丸はオウガに向かって突撃を掛ける。しかしオウガの絶大な霊気を目の当たりした瞬間、自身の愚かしさを後悔していた。


「全てを断ち、一切を穿て!! 万象塵羅(ばんしょうじんら)……星砕(メテオリック)天羽(・ザンバー)々斬ー――――――――ッ!!」


 振り下ろされた威光が全てを飲み込み、放たれた刀剣ごと外道丸の本体を蒸発させていく。


「この機体は我らが鬼族の頭領にして最強の熾鬼神・王呀(おうが)。外道丸……最初(はな)から貴様の敵う相手ではなかったのじゃ」

『父親を利用してまで……この裏切り者がぁ!!』

「父上の遺志に反した貴様が言うな。もう消えろ」

『――――――――ッ!!』


 外道丸は霊子の光剣に両断され、魂魄ごと消滅させられた。

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