表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天道寺天真の陰陽終末戦線  作者: くろえ
20/50

第19話 世界の真実

「……何が、どうなったんだ」


 気が付くと、半壊したタケミカヅチがオウガの前に倒れていた。


「御主、覚えておらんのか?」


 天真は出撃した後の記憶が曖昧だった。

 阿修羅を倒したことすら、薄らとしか思い出せないでいる。そして額に浮かび上がった紋様も、蒼く染まった髪も瞳も元に戻っていた。


『橙矢君は?』

『魂魄反応、消失しました……おそらく形代も』

「っ!?」


 天真は京子とアカネの通信で、断片的な記憶を取り戻した。

 目の前で阿修羅に噛み砕かれ、タケミカヅチのパイロットは確実に死んでいたはず。なのに反応があるのは何故か。その答えは、機体の内部を見ずとも天真にはもう分かっていた。

 動かぬ鉄塊と化したタケミカヅチの脇を抜け、天真はオウガを前進させた。


『天真! その先に行っては駄目よ!』


 京子からの通信も天真は無視し、オウガを歩かせ続けた。


「この先に……在るはずだ。在るべきものが」


 見える景色は一六年間ずっと見てきたもののはずだ。しかし今の彼には、それがどうしても本物だとは思えなかった。


『天真!』

「京子、もうよい。見たければ見せてやろう」


 凛音が早九字を切ると、景色の一部が格子状に切り取られ外界への扉が開かれた。


「ッ!? これは……」


 天真はオウガを進ませ、見知らぬ景色の向こう側へと踏み出した。

 その先に広がっていたのは『無』だった。

 雲一つ無いモノクロの空。草木一本生えていない、果てしなく続く灰色の大地。

 そこはまるで月面の様な、本当に何も無い荒野が広がっていた。しかしその空漠たる世界には無数の『何か』が泳ぐように飛んでいた。


「ど……どこだここは……? なんだあれは?」


《ここは〝忘念郷〟と呼ばれている世界。人間が存在した世界から、1フェムトメートルずれた座標に位置する位相空間。浮遊している存在は邪霊、死霊、亡霊などと呼称されている。人間の魂魄とは異なり、陰のエネルギーのみで形成された幽体》


 オウガの人工知能が天真の問いに答えた。


「忘念郷? 邪霊? ここが街の外だと? 日本は……世界はどうなっている!?」

《回答不能》

「ふざけるな!」


 拳を叩きつけ憤慨する天真を見兼ね、凛音がおもむろに口を開いた。


「世界はおそらく滅びている。人類そのものもな」

「人類が滅びた……だと?」

「そうじゃ。そして陰陽連の目的はただ鬼を滅するだけではない」


 凛音は透過型キーボードを操作し、天真の座る正面ディスプレイにデータを表示させた。

 ディスプレイには〈プロジェクト・オウガ〉と記されている。


「プロジェクト・オウガ……なんだこれは?」

「六体の鬼全てを封滅し、その霊力を以って新世界への扉を開く。それがプロジェクト・オウガじゃ」


 その計画の完遂こそが、人類救済の唯一の手段であり陰陽連の目的だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ