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天道寺天真の陰陽終末戦線  作者: くろえ
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第14話 劣勢

 燈矢に誤算があったとすれば、それは鬼がただ本能で動く生物だと思い込んでいたこと。人類文明を破壊し、ヒトを喰らい魂を貪る。知能など持ち合わせていない。そう勘違いしていたことだった。

タケミカヅチの槍は阿修羅ではなく、何故かタケミカヅチ自身の頭部に突き刺さっていた。メインカメラとなる頭部が貫かれ、前面の液晶ディスプレイに砂嵐が走る。そしてコクピット内部が薄暗くなった。


「何がどうなっている!? おい、司令部!」


 燈矢は外の状況が把握できずに焦った。

 槍が阿修羅の胸の手前で消失していたのである。正確には、槍の先端から中央部分までが、虚空に展開された光る紋様の中に飲み込まれていた。それは空間と空間を繋げるゲート。

 ほぼ同時に二つ目の紋様が、タケミカヅチの眼前に出現。そこから出てきたのは、タケミカヅチ自身の槍だった。


「く、空間を捻じ曲げたの?!」


 痩躯の鬼・羅刹の全身が赤く発光している。

 アカネは鬼の解析モニターに表示された幾何学模様を目にし、その表情を曇らせた。


「コードNの周囲に、えっとこれは……エキゾチック粒子を確認しました!」


 エキゾチック粒子とは、現代物理学では未だその存在を確認されていない未知の粒子。主にタキオンといった仮説上の粒子存在である。オウガの動力源である霊子と酷似しているが、解析反応が微妙に異なるため、陰陽連ではエキゾチック粒子と呼称していた。


「いけない! 燈矢君、早くベイルアウトしなさい!」


 京子は得体の知れない悪寒を感じ、タケミカヅチから脱出するよう促した。


「ふざけるな! ここで退けるものか!!」


 ――まだ頭部と左腕が破壊されただけ。サブのモニターが映れば戦闘の継続は可能だと、燈矢は考えていた。


「意地を張っている場合じゃないでしょう!?」

「張れる意地すらなくば、戦場になど赴くものか!!」


 雄々しく燈矢が叫んだ直後、タケミカヅチのアクチュエータが駆動を再開した。遅れてコクピット内の照明も明るさを取り戻していく。


「よし、まだ動くぞ」


 時を同じくして、天真はオウガの格納庫まで辿り着いていた。


「凛音!」


 オウガの足元で待機していた凛音を認め、天真はその名を叫んだ。だが当の凛音は、腕を組み突っ立ったままいる。そして言外に「乗らないと言ったはず」だと、猜疑の眼差しを天真に向けてきた。


「一つ忠告しておく」


 凛音は天真のもとへ歩み寄る。

 そして頭一つ分高い少年の顔を、目を、真っ直ぐに見据えた。


「な、なんだ?」

「正味な話、誰も御主には期待しておらんし、正義の味方気取りならば考えを改めろ」


 柳眉を逆立たせ、凛音は冷たく言い放った。

 凛音は知っている。

 凶星を持つ人間が行き着く先を知っていた。

 だからこそ京子や夜白と同じく、本心からいえば戦って欲しくはないと思っていた。


「じゃがそれでも御主が戦うというのなら、この先にどんな犠牲がでたとしても決して目を背けるな」

「……わかった」

「その言葉、努々忘れるでないぞ」


 凛音の言葉が意味するところは、まだ天真には分からなかった。だが戦いたくないと思っている一方で、これが自分にしか出来ない事だという妙な確信もあった。何より確かめたい真実もある。それが動機だと言い聞かせ、天真はオウガに再び搭乗する決意を固めた。


「後できっちり聞かせてもらうぞ。この世界の真実を――」

「是非もない」

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