可愛い後輩に寝てたら起こされた
「あれ先輩……た、倒れてるのはなんでですか? 大丈夫ですか?」
後輩……我が部活唯一の僕以外の部員、美亜の声がする。
僕は起きた。
「どうしました……?」
「あ、いやなんでもない。寝てただけ」
「……そうですか。じゃあ作業します?」
「あ、うんそうだな……」
僕はうなずいた。
美亜は僕を可愛い目で少しだけ見た後、机にミニチュアの家を置いた。
僕たちの部活はミニチュア部という、ミニチュアを作るだけの部活だ。
部活と言いつつ予算はだいぶ前の代から代々ゼロ円。材料費は自腹か文化祭の時の協力料で賄っている。
協力料というのは、他の部活に協力したことのお礼として、材料費とは別にくれるお金のことだ。
例えば、鉄道同好会の鉄道模型の周りに置く家や山を作ったら、お金がもらえる。
まあそういうこと。
ちょうど今作っているミニチュアの家も、鉄道同好会から依頼されて作っているものだ。
今は文化祭前。
とにかく忙しい時期だけど、正直、あまり頑張る気分ではない。
個人的な理由と、そうではない理由がある。
まず個人的な理由は、幼馴染に先日、振られてしまったことだ。
本当は文化祭の後夜祭で告白するつもりだったのだが、早めに告白してみたら、「幼馴染は友達ですので、あの、どうやっても恋に落ちません」と言われてしまった。
ならどうして僕は恋に落ちてしまったのだろうか。
それはなかなか不思議なことだけど、振られたら何故か、幼馴染のことをどうして好きでたまらなかったのか、忘れてしまった。
幼馴染以外に僕はあんまり女子の親しい人がいない。
男子高校生とは結構女子に興味を持つもんで、だから幼馴染に興味を持ってしまった、だけかもしれないしちゃんと理由があったかもしれない。
もうかなりはっきりと振られたから、今から考えても意味がない。
……ぼちぼち個人的でない方の理由に移ろうか。
「……先輩? なんか手が動いてないですよー」
「あ、ごめんね」
僕は謝った。
美亜は僕を責めずに、少し笑った。
美亜も同じことは思ってるはずなんだよな。
そう。今年の文化祭は、おそらく中止だ。
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本作は5,6話ほどで完結予定です!
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