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第2章・1話 春琴の一番弟子


 気難し屋のお嬢様が、何故私に温情を示してくださったのか、初めは不可解でしたが、考えているうちに、謎が解けてきました。

 

 お嬢様は見栄っ張りなのです。

 目が見えないという負い目があるせいか、他人からどう思われているか、とても気にしておられるようでした。

 それが三味線のご自身の腕を磨くことに繋がっているようでしたが、今度はその熱が私にも向けられ、よくまあ泣かされたものです。


 そして周囲の者も止めることをせず、むしろそう仕向けたのです。

 盲目のお嬢様は幸福な家庭にあっても、ややもすれば孤独に陥りやすく、憂鬱になりがちでした。

 ご両親は勿論もちろん下々の女中共まで取扱いに困り、何とかして心を慰め気を晴らさせる術もあらばと苦心している矢先、私が現れたのです。

 趣味が同じなら話も合うだろうと踏んだ判断でした。

 大方、お嬢様の我儘わがままに手を焼いていた女中たちは、私にお相手役をなすり付けて、少しでも自分たちの荷を軽くしようという考えでしょう。


 何にしてもお嬢様がが私を弟子に持とうと言い出してくださったのは、親兄弟や奉公人共に取って有り難いことだったのです。

 いくら天才児といっても11歳の女師匠が果たして、人を教えることができるかどうかは問うところでない、ただそういう風にして、彼女の退屈が紛れてくれれば助かる。

 言わば「学校ごっこ」のような遊戯をあてがい、私にお相手を命じたのです。


 しかしご主人には苦悩があったようです。

 今までも毎日手曳きを勤め、一日の中の何時間かは娘に仕えている。

 その上娘の部屋へ呼ばれて、音楽の授業を受けたとすると、店の仕事をかえりみる暇はない。

 商人に仕立てるつもりで預かった私を、娘の守りにしてまっては、国元の親たちにすまないという心づかいもあったようです。

 ですが、丁稚一人の将来よりも娘の機嫌を取る方が大切であったし、私自身もそれを望んでいる以上、そのままにしてくださいました。


 私がお嬢様を「お師匠様」と呼び出したのはこの時からです。

 日常では「こいさん」と呼んでよいが、授業の間は必ずそう呼ぶようお嬢様に命じられました。


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