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百合の話(仮題)  作者: ねこのぬいぐるみ
40/64

40話

 ○橙木夏美



「具合、どう?」


 ゆっきーの声が聞こえてきた。


 隣を見れば、心配そうな顔をしたゆっきーがいる。


 ずっと寝ていた私を心配してくれているらしい。


 普段はそれだけで嬉しくもなるのだけど、今はそんな気分ではない。そんな気分にすらなれなかった。


「うん、もうだいぶ良くなったよ。ありがとね」


「そう、良かった。でも、帰りは運転しないで休んでてね。私が代わりにするから」


「ゆっきーの運転かー。自信の程は?」


「えーと……免許取って以来一度も運転してないから、自信はあんまり無いかなー」


「うわっ、すっごい不安なんだけど」


「機会がなかったんだよ」


「それなら──」


 そこで、更に別の声が聞こえてきた。この声は、うん。


「──私が運転するわよ。年長者としても、それくらいはさせて欲しいわ」


 遥さんだ。ゆっきーを挟んで隣に並んできた。


 彼女の声を聞いてすぐ、私は前を向いた。ゆっきーと遥さんが二人で並んでいるところを見たくなかったから。


「それじゃあ、遥さんにお願いしよっかな」


「ええ、任せて」


 私のお願いを、遥さんは快く引き受けてくれた。


(……困ったなあ)


 遥さんの声を聞いて、私は悩まずにはいられなかった。


 どうやら私は「声も聞きたくない」と思えるほど遥さんが嫌いな訳では無いらしい。


 遥さんがゆっきーの近くにいると不安になるし、二人が楽しげに話していると耳を塞ぎたくなるけれど。


 遥さん個人のことが、私は嫌いじゃないらしい。


 第一印象が良かったせいかもしれない。昨日の彼女との会話が楽しかったせいかもしれない。


 数少ない遥さんとの思い出が、遥さんを嫌いにさせてくれなかった。


 ──遥さんじゃなければ。


 またそう思った。

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