39話
○湊優希
「ねえ、優希さん」
「なんですか?」
「優希さんにとって、夏美さんってどんな人?」
すごく既視感のある質問だった。気のせいではない。つい先ほどなっちゃんからも同じようなことを聞かれたばかりなのだから。
そういえば、遥さんとなっちゃんは昨日も楽しそうに会話していたし、二人は波長が合うのかもしれない。
「うーん、なんて言えばいいんでしょう……」
ひとまず、先ほどと同じような返しをする。本当になんて言えばいいかわからなかったので。
「そうね。一言で言えば、どんな人なのかしら」
一言か。
それなら……。
「優しい人、ですね」
「優しい?」
「はい。なっちゃんはいつも優しいですね。あと、明るくて元気です。でも自分の悩みとかは人に言わないので、見栄を張って明るく振る舞うこともあります」
「そう……」
「あ、なっちゃん達帰ってきましたね」
噂をすればなんとやら。なっちゃんと氷野さんが私たちのいる休憩スペースにやってくる。
しかし気になる点があった。どこかなっちゃんの表情に影が差しているように見えたのだ。
「あれ、なっちゃんどーしたの?ナンパでもされた?」
真雪も私と同じようなことを思ったらしい。ナンパというのは想像していなかったけど、なっちゃんなら話しかけられることもあるだろう。胸大きいし。
「あーいや、ちょっとお腹痛くてさー。あはは」
お腹の辺りに手をかざして笑いながらなっちゃんは答えた。無理をしている時の笑顔だ。さっき遥さんに話したような、見栄を張っている時の明るさがそこにはあった。
「そうなの?休む?無理しない方がいいよー」
「うーん、じゃあちょっとだけ休もうかな。私はここで寝てるから、みんなは遊んできなよ」
そう言ってなっちゃんは横になる。
「なっちゃん、ブランケット。お腹痛いなら、体冷やさないようにね」
「ん、ありがと」
力無い笑みを浮かべてブランケットを受け取ったなっちゃんが寝たのを見て、私もプールへと向かう。
それから、結局なっちゃんは最後までプールには入らず休んでいたのだった。




