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百合の話(仮題)  作者: ねこのぬいぐるみ
22/64

22話

 〇湊優希



 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あのー、黒咲さん?」


 ………………寝てる?


 え?


 寝てるの?


 嘘でしょ?


 さっきまで普通に話してたよね?


 人ってこんな風に寝るの?


 気絶するように?


 電池が切れたロボットみたいに?


 あれって、フィクションだけじゃないの?


「黒咲さん、大丈夫ですか?」


 すぅ……すぅ……。


 うん、寝てる。


 完全に寝てる。


 私の体をベットにして、私の肩を枕にして。


 気を失ったように、眠っている。


 ……とりあえず、どいてもらおう。


「……これでよし」


 ひとまず黒咲さんには、近くに置いてあったクッションを枕にして、ソファーで寝てもらうことにした。


 ソファーの横に座り、黒咲さんの寝顔を眺める。


「……」


 ついさっきまで、私を押し倒していたくせに。


 それが今では私の目の前で、なんとも気持ちよさそうにすやすやと眠っている。


 こんな無防備な姿で。


 黒咲さんからしたら、さっきまでの私もこれくらい無防備に見えたのだろうか。


「はぁ…………」


 心臓に悪い。


 まったく。


 本当に。


 さっきのあれは、結局何だったのか。


 いや、何をしようとしていたのかなんて、分かってはいるのだけど。


 突然あんなことをしておきながら、今は目の前で安らかに眠っている黒咲さんの姿を見ていると、私にしては珍しくも、その黒咲さんが憎らしく思えてきた。


「えい」


 ぷにぷに。


 人差し指を、黒咲さんの頬に突き刺す。


 ぷにぷに。


 綺麗で柔らかい肌だ。


 だけど、優香ちゃんの方が上だな。


 優香ちゃんは更に弾力があるのだ。


 あの触り心地に勝るものはないと思っている。


「えい、えい」


 ぷにぷに。


 しばらくの間、黒咲さんの頬を堪能した。






 何故、黒咲さんは突然眠ってしまったのか。


 思い当たる節は一応あった。


「このチョコかな……?」


 それは、先程まで黒咲さんが食べていた海外のチョコレート。


 これにアルコールが入っていて、急に酔いが回って寝てしまったという冗談みたいな推理が、一応あった。


 けど、アルコール入りチョコのアルコールってそんなに強いものなのだろうか?


 そんな疑問も浮かんだが、そんなことよりもっと重大な問題がある。


「どうすれば……」


 このまま、黒咲さんを寝かせたままでいいのだろうか?


 黒咲さんが起きるまで私がここにいれば、それでいいのだろうけれど。


 しかし、一番の問題は黒咲さんの家族が帰ってきた時だ。


 この状況をどう説明すればいい?


 そもそも、挨拶をしなければいけないという問題がある。


 やばい。


 考えただけで、お腹が痛くなってきた。


 とりあえず、黒咲さんを起こしてみるか。


 もし起きてくれたら、ほとんどの問題は解決したようなものだ。


「黒咲さん。起きてください、黒咲さん」


 ゆさゆさ、ゆさゆさ。


 すやすや、すやすや。


「黒咲さーん」


 ぐらぐら、ぐらぐら。


 すぅ……、すぅ……。


「くーろーさーきーさーんー」


 ぶるぶる。


 ぶるぶる。


「……黒咲さん、意外と大きい」


 新たな発見だった。


 黒咲さんは着痩せするタイプのようだ(胸回り)。


 私よりありそう。


 なっちゃんよりは無い(断言出来る)。


 だからと言って羨ましいかと言うと、別にそうでも無い。


 なっちゃんに言わせると、使い道のない巨乳ほど邪魔なものは無いらしい。


 使い道って。


 まあ、肩がこるとかはよく聞くし、いい事ばかりでもないのだろう。


 私は妹である優香ちゃんに負けなければいいかな、くらいに思っている。


「起きないな、黒咲さん」


 ソファーの横に座り、再び黒咲さんの寝顔を眺める。


「ん、うぅ……」


「黒咲さん?」


「……ん、んんぅ…………ゆう、き……さん……」


 ……起きてはいないみたい。


 寝言だった。


 夢でも見ているのだろうか、私の名前を呼んでいたけど。


「……や、ぁ……」


 少しだけ、寝顔が苦しそうに歪んだ。


 うなされている?


「はぁ……まぁ、いいか。起きるまで待ってよう」


 最終的に、無理に起こすのも悪いと思った私は、黒咲さんの目覚めを待つことにした。


 あるいは、考えることを放棄したとも言う。

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