099 最上級の大規模禁術魔法
「じゃあまず、軽めの禁術魔法からやってみようか」
「うん!」
てなわけで、禁術魔法の練習をする為、帝国が貸し切っているプライベートビーチにやってきた。
ここであれば、ハデな魔法を放っても被害が出ないはずだ。
まずは攻撃系統の魔法から指導していく。
「せっかく海があるんだし、水を操る魔法から。よーく見てて」
術式を構築し、満ちている海の水に干渉していく。
直後、沖の方で数十メートルにもなる巨大な水の柱が立ち上った。
撃ちあがった海水が雨のように周囲に降り注ぐ。
うむ、いい火力だ。
「す、すごい……」
「使用する術式はわかるか? 多分、頭の中に浮かんでくるからそのまま使用すれば同じことができると思うぞ」
「やってみるね」
返事をしたニーナが目を瞑り、集中し始めた。
直後、足元に青く光る魔方陣が展開された。
え、まって。
魔方陣、大きすぎない?
プライベートビーチを覆いつくす大きさだ。
と、驚いた瞬間。
足が水に浸かった。
海の水が増幅している。
水深はどんどん上がっている様だ。
「まった、ニーナ! 術式を間違えてる! それは最上級の大規模禁術魔法だ! 止めて!」
「え、あれ!? まっ、どどど、どうやって止めるの!?」
「魔力を遮断して! 水を沖の方へ移動させ————」
俺の言葉は途中で途切れる。
「ごぼば」
全身に圧力を感じた。
見渡す限り、全て水で埋め作れている。
おいおいおい、俺が魔精霊イフリートを倒した時より水の量が多いんだが?
そして俺は泳げない、非常にマズイ、溺れてる。
一緒にニーナも溺れていた。
はは、引きこもりだったからな、俺と同じで泳ぎ方を知らないんだろう。
笑ってる場合じゃねぇ!
死ぬ、死んでしまう!
パニックになっているニーナに魔法の制御は無理だ。
俺が完全に溺れてしまう前になんとかしないと。
ニーナが出現させた水に向けて全力で干渉を行う。
ホントになんちゅう水の量だ、人気のないところでホントによかった。
俺の魔法により、水は沖に向けて流れ始めるが……。
あれ、俺達も流されてね?
いや、そうだよな、水が流れれば一緒に流れるのは当たり前じゃないか。
本格的にヤバい!
と、思った瞬間、襟元を掴まれ引っ張られる感覚があった。
リリーだ。
肉体強化魔法を使い、助けに来てくれたみたいだ。
リリーは俺とニーナを引っ張り、陸へと泳いでいく。
「げほっ……。リリー……、助かった」
「ん、もっと褒めて。ご褒美、今日は独占」
この欲張りさんめ。
いやでも助かったので検討しとこう。
「アレクシス様、ニーナさん! 今治癒魔法をかけます!」
慌てながら近づいてきたリンシアが治癒魔法をかけてくれた。
全身の痛みと息苦しさがさっと引いていく。
水が増えた瞬間、少し離れた場所で見ていた二人はなんとか避難できてたみたいだ。
「ニーナ、大丈夫か」
「げほ……うぅ……ごめん……なさい」
「謝る事は無い、俺も一番最初に禁術魔法を使った時は同じような状況だった。一緒に練習していこう」
「……うん」
俺の場合、イフリートと戦っている際、事前に結界魔法を使っていたから溺れなかっただけだ。
今考えると、自分の魔法で死んでた可能性もあるんだな……。こわいこわい。
プライベートビーチはびしょぬれになってしまったが、何とか水は引いたので、もう少し魔法の練習を続けることにした。




