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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第二章
95/200

095 引きこもり系皇帝陛下

「では、今後の話をしよう」


 そう言って、皇帝陛下が話題を切り替えた。


「近いうちに魔精霊ウンディーネとの決戦が控えている。既に相手方はこちらにちょっかいを出してきているがな」


 公国で二回、連邦国の水害も合わせると合計三回、魔精霊ウンディーネによる襲撃があった。

 だが、これは生み出した下級、中級精霊によって引き起こされたものであり、序章でしかない。


「今のアレクシス、リンシア、リリーの戦力があれば魔精霊ウンディーネの打倒は可能だと考えている。だが、次に現れる魔精霊、そして魔王は勇者の力無くしては難しいだろう」


 悔しいが、その通りだ。

 聖精霊と同じく、魔精霊も第四柱からは次元の違う強さだという知識も流れ込んできた。

 その奥に控える魔王はもっと底知れない。


「そのためにも、ニーナには帝国に所属してもらいたいと考えている。帝国が全力で勇者に支援を行えるようにな」

「アタシはいいんだけど……お父様が何て言うか……」


 ニーナのお父様、つまり公国の大公様だ。

 公族の屋敷に使用人として勤めていて分かったが、大公様はニーナのことをかなり大切に思っている。

 禁術魔法による威圧でなかなか対面して話すことはできなかったが、引きこもった娘を案ずる優しい父なのだ。

 その気持ちが届いていたかは分からない。


 ニーナが案じているのは、危険だと噂されている帝国に娘を差し出すのは公国の体裁的にどうなのかという話。

 他国から見れば人質に写る可能性もある。

 観光によって収入を得ている公国にとって、評判の低下は凄まじい痛手になるはずだ。


「それについて、私から提案がある。ニーナに、皇位継承権を与えるのだ」


 皇帝陛下の言葉に沈黙が流れる。

 今なんと……?

 皇位継承権……?


 それって、つまり。


「この国はかつての勇者が作り上げた、未来の勇者のための国だ。であれば、勇者であるニーナが君主として導くのが本来の道理ではなかろうか」


 いやいや、だからって皇帝の座を明け渡すというのか?

 今まで全力で勢力を拡大してきた一族が、勇者とはいえ、他国の公女殿下に?


「ふ、え……あえぇぇぇぇぇぇ————————っ!?」


 ニーナが何とも気の抜けた絶叫をした。

 いや、叫びたくなる気持ちもわかるけど。


「大公殿との交渉は私からしよう。強引に攻め込み支配などしない、対等な関係で国交を持たせてもらう。であれば、今後ニーナが皇帝になったとしても安心であろう」

「あ……うぁ……う……」


 あ、この人、本気でニーナを皇帝にするつもりだ。

 目が本気である。

 果たして、元引きこもりに皇帝陛下が務まるのだろうか。


 というか皇位継承権って普通、自分の子供に与えるものなんじゃ。

 ん、待てよ。

 帝国って皇帝陛下はいるけど、皇太子っていない……?

 見たこともないどころか、話題にも上がったことがないぞ。

 話題にも上がらないということは……存在しないのか。

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