093 危険な美少女→普通の美少女
ニーナは、アーネリアフィリスに聞いた内容を語り始める。
まず、神との対話は基本的に一方的だ。
神から語り掛けてくることはあっても、ニーナが呼び出すといったことはできない。
いわば、神託のようなものだそうだ。
で、神託の内容だけど、魔王の位置は神にもわからないとのこと。
いや、なんじゃそりゃ。
皇帝陛下もニーナが神と通じれば魔王の居場所を割り出せると思っていたそうだが、残念ながら当てがはずれた。
ただ、居場所がわからない理由についてだけど。
どうやら魔王は復活は遂げたとはいえ、現世に実体化していないのではないかという予想。
肉体を持たず、魔力だけの存在であるから、場所を特定できないのかもしれないと、神のお言葉だ。
確かに、魔精霊シルフィードと戦った時に現れた魔王も黒いモヤのような塊で、肉体はハッキリと確認できなかった。
もしかすると、完全に力を取り戻していない状態で受肉すれば、圧倒的な力を持つ勇者に滅ぼされるのではないかとビビっているのかもしれない。
わからんけども。
「それと、みんなに新しい禁術魔法の術式を授けるって」
「新しい禁術魔法の術式……?」
え、もしかして魔法を授けてもらえるのか?
いやさすがアーネリアフィリス様!
魔王の位置がわからない駄女神だなんて思ってませんよ。
ニーナが「アタシの手に触れて」と言いながら、聖剣を持つ手とは逆の手を前に差し出す。
いやニーナさん、さっきから魅了を放ちっぱなしなんですけど。
勇者として覚醒したからさらに魅了が強まってるんですけど。
え、この状態で触れるの?
リンシアもリリーも平気なのか?
俺だけ?
胸の高鳴りが止まらない。
「アレクシス様、どうしたんですか?」
「えっ、ああ、なんでもないよ」
ちょっと魅了のせいで一部大変なことになってるだけだ。
大魔法使いのローブで隠れてるから問題ないはず。
というか、どうやら俺にしか魅了の効果が発動していないらしい。
確かに心象魔法は効果を向ける相手を絞ることができる。
とはいえ、無意識でそれをできるのは相当レベルが高いぞ?
「くんくん、アレク。発情のニオイがする」
「リリー!?」
何を暴露してくれてるんだ!
そして上下に手を動かすな!
ニーナがポカンとしてるだろ!
「その、ニーナ。心象魔法を止めてくれないか……?」
「へ、心象魔法?」
「ああ、俺に向けてずっと魅了を放ってる」
沈黙の後、ニーナはアワアワとしながら魔法を遮断させた。
よしよし、これで危険な美少女から普通の美少女に戻ったぞ。
俺はまだ危険な状態だけどな。
トイレ行ってきていいですか。
「ごごご、ごめん! ワザとじゃなくて!」
「大丈夫だよ。ちゃんと止めれたし、意識して練習すればコントロールできるようになるよ」
というわけで、これからニーナの手に触れる。
全力で心を落ち着かせながら。
大丈夫、平常心平常心。
リリー、いい加減手を上下に動かすのはやめないか。




