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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第二章
84/200

084 覚醒すれば、このぐらい余裕だよ

「アレク、敵」


 不意に、背後から声がした。

 視線を向けると、リリーが窓を開けて部屋に侵入していた。

 おい、開けっ放しにしたら雨で部屋がびしょぬれになるだろ。


「え、ここ四階よ? ど、どうやって……というか、誰……?」

「——っ」


 ニーナがリリーの姿を見つけた瞬間、心象魔法を発動し息苦しさを感じた。

 リリーの表情が歪む。

 まあ、突然知らない人が部屋に入ってきたのなら驚くのも仕方ない。


「リリー、状況は?」

「ん、中級精霊。いっぱい、街まで来てる」


 中級精霊ということは、魔精霊ウンディーネの手先だろう。

 この大雨は中級精霊によるものだったか。

 狙いは勇者であるニーナだろう。

 街の中まで攻めてくるということは、ニーナの覚醒は近いのかもしれない。


「それじゃあ、一仕事しますか」

「へ……なに……何なの……」


 ニーナに背を向けて、雨の降りこむ窓に足をかける。


「ちょっと、世界の平和を守りにね。ニーナ、ここで見ててよ。俺の力を見せてあげるから。君にも備わってる力だよ」


 そう言い残し、全身に肉体強化魔法を巡らせる。

 空を見上げると、白く曇る雨の中に複数の巨人が存在するのが見て取れた。

 数が多いな。

 視界に入るだけで二十体は存在する。


「そうそう、俺がここに来たことは誰にも内緒ね」


 脚部に力を入れ、その場から跳躍した。


「まって! アレクシ——」


 跳躍する直前、俺を呼ぶニーナの声が聞こえた。

 チラリと振り向くと、驚いた表情のまま窓枠に手をかけるニーナの姿が目に入る。

 風邪を引くから、窓は閉めとくように。


 魔力を集中させ、転移魔法、その応用を行う。

 刹那、俺の手のひらに魔方陣が展開され——大魔法使いの杖が出現した。


 よし、上手くいったぞ。

 俺が転移するのではなく、向こう側から物を呼び寄せる逆転移だ。

 場所を指定して物を置いておく必要はあるけど、手荷物無しで、いつでも道具を取り出せるようになった。


 杖を掲げ、攻撃系統の術式を構築する。


「ル゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛————ッ!」


 複数の中級精霊が俺を目掛けて突っ込んできた。

 振る注ぐ雨が集約し、鋭い槍の様な形状となった魔法と一緒に。


 全方位からの攻撃であり、逃げる隙間は存在しない。

 だが、その攻撃は俺に届かない。


 転移を行い、さらに隠密魔法により姿を眩ます。

 残念、俺はもうそこにはいないぞ。


 高い建物の屋根の上でじっくりと術式を構築し——俺を見失い右往左往しっている巨人たち目掛けて。


 禁術魔法を放った。


 巨大な緑の魔方陣が街の上に浮かび上がる。


 魔方陣は風を生み、雨を飲み込み、巨人たちを巻き込んで巨大な嵐へと成長していく。

 街を襲いに来た中級精霊を一匹たりとも残さない嵐は、雨雲をも飲み込み天高く上昇していった。


 やがて、空を遮るものはなくなり、太陽の光が水浸しになった街をキラキラと照らす。


 うむ、虹が綺麗だ。


 ニーナも俺の活躍をしっかりと見ていてくれたようだ。

 開いた口が塞がらないといった表情になってるけど。

 口を開けたままだと美少女が台無しだ。

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