071 前の使用人は今頃、帝国宮殿で働いてるよ
公族の屋敷は海から少し内陸に向かったところに存在する。
やはり観光地ということもあって、街はかなり活気があるようだ。
帝国も賑わっていたが、こちらも露店などが立ち並び、とても生き生きとしている。
面白いのが、海から放射状のように道が何本も広がり、それに沿って高い建物がズラリと並んでいるのだ。
かつ、奥に進むにつれてゆるやかな傾斜がついており、遠方の地面が自分の視線よりも高い位置にあるという。
何とも不思議な光景である。
密偵が教えてくれた情報によると、過去に何度が水害に見舞われたため、街の奥に水が届かないよう傾斜がつけてあり。
また、すぐに高い場所に避難できるよう建物も平均して背が高いようだ。
そんな街並みを抜けて、一番高い位置に存在する公族の屋敷へと到達した。
帝国の宮殿や、王国の王城とはまた違った雰囲気の屋敷。
いかにも観光地といった印象で、全体的にゴテゴテしている。
装飾品が多いな。
密偵とはここでおさらばだ。
後ろからついてきてると思ったら、気が付けば消えていた。
隠蔽魔法を使ったのだろう。
おさらばとはいえ、隠れて俺達の監視は続けるそうなのだけど。
ちなみにリリーも隠密魔法により姿を隠している。
ほんとにどこにいるのかわからない。
俺達が存在を把握でいないから、はぐれないように気を付けるんだぞと伝えたら、「リリー、アレクの女だから。離れない」とドヤ顔で言っていた。
多分大丈夫だろう。
なにはともあれ、潜入だ。
屋敷の扉をコンコンコンと叩くと、中からリンシアと同じメイド服を着た女性が出迎えてくれた。
際どい。
いて!?
なにやら足に衝撃がはしったんだが!
はっ、潜伏してるリリーか。
何やら見えない圧を感じる。
はいはい、俺の女はリンシアとリリーだけですよっと。
……今のところは。
「あら、アナタたち。もしかして新入りかしら?」
「はい、本日からお世話になりますリンシアと申します」
「同じく、アレクシスです。よろしくお願いします」
「話は聞いてるわ、リンシアにアレクシスね。さ、入ってちょうだい」
密偵がしっかりと仕事をしてくれたおかげで、すんなり潜入することができた。
屋敷の中も、やはりハデだ。
お国柄なのだろう。
もしかして、公女殿下もかなりハデハデなのだろうか。
「ホント、ちょうどいいタイミングで二人が入ってきてくれて助かったわ」
前を歩く際どいメイドさんがそう言った。
「ちょうどいいタイミング?」
「ええ、先日使用人が二人ほどポーンと辞めちゃったのよね。多分、他の所にもっと好待遇でスカウトされたんだわ。おかげで大変だったんだから」
……もしかして、それは密偵が裏で手を引いていたからではないだろうか。
なんか申し訳ない。




