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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
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007 確証のない真実

「グランドル伯爵、お伝えしたい事があります」

「なんだ、アレクシス。初級魔法でも使えるようになったか」


 大急ぎで王都へと戻り、グランドル伯爵の住む屋敷へとやってきた。

 ちょうどタイミングよく屋敷に伯爵がいたので、面会の時間をいただけた。


 グランドル伯爵は書斎で机に向かい、ペンを動かしたまま俺の返事を待つ。


「あ、いえ初級は……使えませんでしたが、別の魔法が使えるようになりました」

「――なに。本当か、アレクシス!」


 俺の返答に突如グランドル伯爵が立ち上がり、かつてなく驚いた表情で俺に視線を向けた。

 今までこんな反応を向けられたことが無かったので、少々違和感を感じる。


「お前を引き取ってから三年……いつまでたっても魔法が使えず落胆していたが、そうか! ついに魔法が使えるようになったか! どんな魔法だ、見せてくれ!」

「あ、いえ、ここで使うには少々問題が」


 グランドル伯爵の顔が曇る。


 王都へ戻る途中、学園で習った初級魔法から応用魔法まで色々試してみたが、やはり使える気配はなかった。

 俺が使えるのは、リンシアの言っていた【禁術魔法】というものだけらしい。

 あの規模の魔法を使うには……この狭い書斎では危険すぎる。


「何だ、使えないのか?」

「い、いえ、そのようなことは!」


 そうだ、結界魔法。

 あの魔法であれば危険な状況に陥ることはないはず。


 魔法を発動させようとする……が、どうも即座に発動させることができない。

 あの時は命の危機が迫っていたから咄嗟に発動できたが、平常時では少々発動に時間がかかる。

 慣れればもっと速く発動させれそうな気がするが――――、


「もういい、お前には本当に落胆した。虚実を伝えて、私が喜ぶとでも思ったのか?」

「もう少し、もう少し時間を頂ければ魔法を!」

「もういいと言っている」


 俺の訴えは、バッサリと切り捨てられてしまった。

 グランドル伯爵と繋がっていた何かが、途切れてしまった気がする。

 今までは期待はされていなくとも、話を途中で中断させることなんてなかったのに。


「勇者の生まれ変わりだと言われたお前を買うのに、いったいどれだけの金がかかったと思っている」

「…………」

「いつか魔法が使えるようになり、膨大な魔力で莫大な富を生み出してくれると信じていたが。期待外れだったようだ」


 成果をあげられなかったのは、事実だ。

 何も言い返すことができない。


 けど、それは今までの話だ。


「……ですが」

「ですが何だ」

「魔法が使えるようになったのは嘘ではありません、実際に使えたんです! 魔王の復活の影響で魔精霊イフリートが現れて……それを……俺が……」


 グランドル伯爵の眼が、さらに冷たいものになっていく。


「俺が……禁術魔法で……」

「ならばその禁術魔法とやらを使ってみろ、今すぐ、ここでだ。できないのだろう、なぜそうやって虚実を並べる。なぜこうも私の期待を裏切る」


 実演もしていないのに信じてもらえるはずがない。

 魔法の発動には……まだ時間がかかる。


 そもそも、魔王の復活だとか禁術魔法だとか何の確証もない言葉を即座に信じてもらえる方がおかしい。

 俺だってリンシアの言葉を信じていなかったじゃないか。

 何の成果も残していない、魔法も今すぐ見せることのできない俺の言葉を、グランドル伯爵が信じるか?


 信じるはずがない。

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