069 誰にだって触れられたくない過去の一つや二つ、あるものさ
皇帝陛下への報告を終え、ひとまず拠点にて待機となる。
水着姿から大魔法使いのローブへと着替えた。
「なあ、リンシア」
「どうされましたか、アレクシス様」
「リンシアの故郷って連邦国って言ってたよな。陛下も少し言ってたけど、連邦国から追放されたのとウンディーネ襲撃って何か関係があるのか?」
リンシアの表情が少し曇る。
あれ、マズイことを聞いたか?
王国で初めてリンシアと出会ったときにおおまかな概要は聞いたが……。
「そう、ですね。わたしが追放される要因となった出来事でもありますから」
王国と連邦国は距離が離れているので今まで情報が入ってくることがなかったので詳しくは知らないけど。
魔精霊の襲撃があった、ということは軽い被害ではなかったのかもしれない。
「ですが。今、わたしは幸せですよ。こうやってアレクシス様が心配そうな顔を向けてくれますから」
う、表情に出てたか。
リンシアの表情は晴れ、ニッコリとしたものになる。
そのまま俺の腕に抱き着いてきた。
たわわん。
これはたまらん。
じゃなくて、あまり深く干渉されたくない部分なのかもしれない。
俺だって王国で罵倒をされていた日々を掘り返されればあまりいい気分にならないし。
「ごめん、配慮が足りなかった」
「ふふ、やっぱりアレクシス様は優しいですね」
いつもの調子に戻っているようだ。
「もし、魔精霊ウンディーネを倒す事ができれば。その時、話させてください」
「わかった」
色々と思うところがあるのだろう。
リンシアの決心がついてから。
話を聞くのはその時になってからでもいい。
「リンリン、なでなで」
そう言いながらリリーがリンシアとは反対側から俺に抱き着き、なでなでし始めた。
なぜ、俺を挟んでなでなでする必要があるのかな?
乙女サンドになってるぞ。
悪くない。
そしてリリー、リンシアの背中をなでなでしているつもりかもしれないが。
身長が足りていないのでおしりなでなでになってるぞ。
リンシアが「んっ」といいながら俺を抱きしめる力が強くなった。
いや、そんな目で見ても俺が触ってるんじゃないからな?
「それはそうとアレクシス様、戦った後なので何だか疲れが溜まっていませんか? 幸い、ここには休憩できる場所もありますし、一休みしましょう」
ほら、リンシアのスイッチが入っちゃったじゃないか。
頬を赤らめながら俺にスリスリしている。
疲れが溜まってるって?
禁術級の治癒魔法はどうした。
他にも溜まってるよ。
「アレク。今日のノルマ、一人十回」
「待て、落ち着けリリー!? 無茶を言うな!」
「ん、楽しみにしてる」
駄目だ、話を聞いちゃいない。
早めにスタミナ回復魔法の開発を行わなければ。




