060 禁術魔法の応用が使えるのは俺だけではないらしい
いやあ、スッキリとした。
色々とスッキリとした。
お風呂というのはいいものですね。
思わず長風呂してしまったよ。
もう干からびそうである。
二人もノリノリだったからね、つい本気を出してしまった。
もうとっくに日が暮れてしまっている。
お風呂のお湯も少し冷めていた。
さて、風呂から上がり後はゆっくりと眠るだけだ。
「なんとなくこうなると思ってたけど。リンシア、リリー、自分に割り当てられた部屋があるはずだが?」
やはり、当たり前のように俺の寝室にリンシアとリリーがいる。
もちろん、かなり際どい格好で。
「まさか、もうお眠りになられるつもりですか? 夜はまだまだこれからですよ」
「リリー、足りない。アレク、もっと」
そう言いながら迫ってきた。
いや、嘘だろ。
あれだけ激しく運動したんだぞ?
リンシアとリリーは期待のこもった瞳を俺に向ける。
「いや……その……」
「アレクシス様」
「アレク」
リンシアの禁術魔法により肉体の疲労はないとはいえ、風呂場で散々搾り取られた俺のライフはもうゼロだ。
このまま続ければ完全にミイラになってしまう。
「悪い……!」
「あ、アレクシス様!」
「逃げる、許さない」
明日にだってできるのだから、ちょっとぐらい待ってくれてもいいだろうが!
密かに発動した肉体強化魔法で脱出を試みる。
が……。
「アレク、捕まえた」
ですよねー。
闘戦士であるリリーの肉体強化に敵うはずがない。
だが、リリーが捕まえたのは本当に俺かな?
「――っ! な、なんで!」
リリーの拘束からスルリと脱出する。
そう、身体の表面に薄い結界魔法を展開したのだ。
捕まえたのは俺ではなく、結界魔法。
さらにただの結界魔法ではない。
シルフィード戦で学んだ応用もしている。
「はずれ……ない……!?」
結界魔法は触れた場所からリリーを取り込みガッチリとホールドする。
高い防御力に加え、王国で今まで学んできた柔軟性を加えることにより、結界魔法はさらに強化されたのである。
「さすがはアレクシス様、禁術魔法をさらに発展させるだなんて。ですが、わたしも同じ禁術魔法の使い手であることを忘れていませんか?」
「え、ちょ……?」
手足を動かすことができない。
あの、リンシアさん?
もしかして、俺と同じ応用方法を使ったんですか?
いや、そうですよね。
結界魔法が使えるんだから応用ぐらいできますよね。
そうですか。
まずい。
結界魔法で完全に拘束された。
しかも肉体強化魔法では脱出できないほど、強固に。
「リリーさん、手を貸しますよ」
「ん、ありがと。リンリン」
さらに強化されたリリーが俺の結界魔法から簡単に脱出する。
あれぇ、おかしいなぁ。
うまく脱出できる算段だったのに。
二人がじわり、じわりとにじり寄って来る。




