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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
52/200

052 ポンコツドラゴン

 巨大な翼をはためかせ、大地に舞い降りるのはまさしくドラゴンだ。

 王都で俺とリンシアが心を折った、あのドラゴンだ。


 ドスン、と地響きを起こしながら着地し、シルフィードと対峙する。


 なぜここに……?

 というか、


「お前……デカくなってない?」

『ガハハ! 気が付いたか! 魔王様の魔力を吸収し続けているうちに我は成長を遂げたのだ! 超級魔物、ダークドラゴンとは我のこと!』


 よく喋る部分は変わっていない。

 が、どうやら元王国にあふれる魔王の魔力を吸収し続け、今の姿まで成長したのだろう。


 そして、凄まじい生命力を感じる。

 先日までとはまるで違う魔物であるようだ。


『なにやらお二方が危険な状況にあると、ドラゴンの勘がピンと来てな! どうやら正しい選択だったようだ! ガハハ、さすが我だ!』


 魔力を吸収し続け、成長したからといって魔王に寝返るということはなかったようだ。

 魔王に寝返る以前に勇者パーティーに寝返ったドラゴンだけど。


 だが、たとえ成長したからといってドラゴンがシルフィードに勝てるのか?

 シルフィードはまだ力尽きてはいない。


 全身から血を流し、ボロボロの状態で次の魔法を発動させようとしている。


 いや、ごちゃごちゃ考えている暇はない。

 完全に修復されていない身体に鞭を撃って、強引に動く。


 もうドラゴンにかけるしかない。


 禁術魔法を発動できないほどに枯渇した魔力を何とか絞り出す。

 リンシアにできたのだ。

 俺にだってできるはず。


 できなければ、それだけ生き残れる可能性が減るのだ。

 やらなければならないのだ。


 学園で必死になって学んだ魔法論理を思い出し、戦いに特化した術式へと昇華させる。


 膨大な魔力ではなく。

 少量で、とても繊細な魔法を。


 ――放つ。


『こ、これは! 力が漲ってくるようだ! これほどまでの高揚感は初めてだ! ガハハッ! 我は最強だ!』


 どうやら、上手くいったらしい。

 なんだ、俺にだって普通の魔法が使えるんじゃないか。

 ドラゴンに上級魔法の肉体強化をかけることができた。


 禁術魔法とはいかなくとも、限りなく身体能力を上昇させる効果はある。

 シルフィードに対してどれだけ通用するかわからない。

 後はドラゴンがどれだけ成長しているかによる。


 ボロボロのおれに肉体強化を使ったところで勝てる見込みは皆無だからな。


「ドラゴン、魔精霊シルフィードを倒せ」

『おうとも! 我が魔精霊シ……ル……フィ…………。ファ――ッ!?』


 先ほどまで自信満々だったドラゴンが急に青ざめた。


「おい、どうした」

『アレクシス様、今、魔精霊シルフィードと言ったか……?』

「そうだが?」


 ドラゴンは絶望的な表情になる。


『ま、魔物如きの我が魔精霊であられるシルフィード様に勝てる訳がなかろうが――――――ッ!?』

「いや、勝てるか勝てないかとかそういう次元じゃなくて、やるしかないんだよ!」


 コイツ、状況がわかっていて助けに来てくれたんじゃないのかよ!


「リ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛――――――ッ!」


 俺達が叫んでいる最中、シルフィードもまた咆哮をあげた。


 まずい、魔法の準備が終わってる!

 シルフィードの周囲に嵐が発生した。


『ぬあ――――――ッ! シルフィード様! お怒りをお沈めください! 何のために過去の勇者パーティーから逃げて生き延びたと思っているんだ! 我はまだ死にたくないッ!』


 ドラゴンは頭を抱えながら悶絶する。

 クソ、このポンコツドラゴンめ!


 役に立つと思った俺がバカだったよ!


 シルフィードの嵐が迫り、そして――


『ぐああああぁぁぁ――――――ッ! 死ぬ、死んでしま……ん……? アレ? あまり痛くなかったぞ?』


 ドラゴンが普通に魔法を耐えきった。


 …………マジかよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] この戦いが終わったら、三人一緒に大人の階段を登るんだ
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