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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
51/200

051 それはまぎれもなくヤツさ

 なぜ、どうして。


 あの炎が直撃すれば、シルフィードを倒すことができるのに。


 炎は淡く空気に溶けるように消滅していく。

 いいや、炎だけではない。


 ブレスを放つ聖精霊サラマンダーまでもが光の粒子となって消滅しはじめた。


 まさか、そんな。


 時間後れだとでもいうのか?


 今の俺の力では短時間しか聖精霊をこの世界に維持できない。

 だからといって。


 あと一歩のところで。


 こんなことがあってたまるか。


 異次元の強さを持つサラマンダーは完全に消滅してしまった。

 もう一度サラマンダーを召喚する魔力はもう残ってはいない。


 そして、シルフィードは――


「リ゛イ゛ィ゛――――――ッ!」


 俺を見て醜悪な笑みを浮かべていた。


 次の瞬間には、土や岩、大木などを巻き込んだ嵐が迫ってきていた。

 シルフィードから発せられた魔法は周囲を巻き込み、さらに肥大化する。

 嵐はリンシアが発動している結界魔法に衝突し――結界を粉々に粉砕して俺達に到達した。


 身体が宙を舞う。


 意識が朦朧とする。


 全身が痛い。


 魔力はもうほとんど空っぽだ。


 シルフィードに攻撃を加える力はもう残っていない。

 まだアイツは死なないのか。

 どれだけ丈夫なんだよ。


 俺達を殺すまでは絶対に死なないという強い意志を感じた。

 敵もまた、本気なのだ。


 本気で世界を滅ぼすつもりなのだ。


 嵐に吹き飛ばされながら一緒に宙を舞うリンシアとリリーを視界に捉えた。

 このままでは落下の衝撃で怪我どころではすまない。

 二人とも、死なせないって決めたじゃないか。


 手を伸ばし、二人の腕を掴んだ。

 そのまま近くに引き寄せ、抱きしめる。


 重力が、俺の身体を下へと引っ張り始めた。


 俺の身体は落下により加速し――、二人を守るように背中から勢いよく地面に直撃する。


「――――――ッ!」


 骨が砕け、肉に刺さる感覚がした。

 外から受けた衝撃が内側に伝達していくのがわかる。


 二人は――、無事だ。

 まだ生きてる。


「ゴフッ――――――」


 口から夥しい量の血を噴き出した。

 呼吸をすることができない。

 砕けた骨が肺にまで到達しているらしい。


 もしリンシアが結界を張っていなければ、シルフィードの魔法で即死だっただろう。

 即死は免れたとはいえ、この状況は……。


 治癒魔法を頼めるような状況ではない。

 リンシアも力を使い果たし、動けそうにないのだから。


 本当に、死んでしまうのか?


 俺は。


 こんなところで。


「アレク……シス……様」


 淡く掠れた声で俺の名を呼ぶ。

 直後、暖かい何かがリンシアから流れ込んできた。


 これは……治癒魔法……?


 破壊された肉体が、内側から修復されていく。

 だが、普段リンシアが使う治癒魔法に比べて格段に効果が弱い。

 禁術魔法ではなく、上級魔法レベルだ。


 ギリギリ、俺の命を繋ぎとめるまで身体の修復が行われる。


「おね……がい。生きて……アレクシス様」


 リンシアは上級魔法以下の魔法を使うことができないはずだ。

 魔力量の多いものは小さな魔力を操作することが凄まじく難しい。


 にも関わらず。

 リンシアはほんの少しだけ残された魔力を振り絞り、俺に上級の治癒魔法をかけ、命を繋ぎとめてくれた。


 自分だって死にそうな状況なのに、そうまでして俺を助けてくれた。

 リンシアに、そこまでさせてしまった。


 俺が無力であるがゆえに。



 力が欲しい。


 みんなを守れるだけの力が。


 窮地を切り抜けられるほどの力が。



 刹那、太陽の光を隠す巨大な影が俺に落ちた。


 なんだ……?


 サラマンダー……いや、火竜ドラゴンの魔法……?

 俺は幻覚を見ているのか?


『アレクシス様! シンシア様! 我が加勢したからにはもう安心だ!』


 いや違う。

 幻覚でも魔法でもない。


 この声は――、


「――ドラゴン!?」

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