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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
47/200

047 魔王

「魔……王……?」


 その言葉が不自然に感じないほど、前方にいる人型の存在から放たれる禍々しさは凄まじい。


 本当に、あれが魔王だとでもいうのか?


 帝国が必死になって探し続けても、まだ見つかっていないんだぞ。

 それが、今、ここに……?


≪忌まわしき勇者の仲間たちよ≫


 声が、聞こえた。

 音ではない、耳を通してではなく、直接俺に声が届いたのだ。


 杖を持つ手が震える。

 心の底から震えあがっている。


 ああ、次元が違う。

 過去の勇者パーティーはこんな恐ろしいものと戦っていたのか?


≪非常に残念だ。我が今ここで直接お前たちの命を奪えないことが≫

「お前は……魔王なのか……!」


 命をかけて世界を守るのが俺の役目だ。

 ここで引けるわけがないだろ。


 気力を振り絞り、魔王と思わしき黒い人型に言葉を投げた。


≪だが、直接手を下せぬ代わりに我が配下シルフィードに役目を与える≫

「リ゛……イ゛イ゛……」


 どうやら俺の質問には答えてもらえないらしい。

 だが、間違いなくアレは魔王だと俺の本能が訴えている。


 黒い人型のオーラが、シルフィードに注がれ始めた。

 直後、シルフィードの肉体がミシミシと音をたてながら肥大化しはじめた。


 まさか、急速に成長させているのか!?

 あれ以上成長されては、俺の攻撃が届かなくなる可能性がある。


 まずは成長を阻止しなければ!


「リンシア! リリー!」

「――っ! リリー、動く……!」

「はい! 恐れている場合ではありません、阻止しましょう!」


 俺の掛け声により、リンシアとリリーが同時に動き始めた。


 リンシアはローブの袖で鼻血を拭き取り、治癒系統、補助系統の魔法を同時展開する。

 肉体の強化に加え、先程消費した魔力を回復する効果も付与されている。


 リリーは強化された身体能力で魔王に爪を向け、突進した。

 同時に俺も杖を掲げ、禁術魔法を発動する。


 もたもたしている場合ではない。

 即効性かつ高威力を放たなければ。


 杖の先から黄色に輝く魔方陣が展開され、刹那、雷撃が魔王に向けて放たれた。


 激しい光の攻撃魔法はリリーの爪撃と共に魔王に到達するが――、


「なっ、防がれた!?」


 まるで水のように動く黒いオーラによって攻撃が阻まれてしまった。

 直後、雷撃の爆音が遅れて周囲に響き渡った。


 あのオーラで俺の発動した火竜ドラゴンの禁術魔法も防いだというのか?


≪急激な成長により、シルフィードは役目を終えるだろう。だが、お前たちを葬り去るにはこれで十分だ≫


 シルフィードの肥大化は止まらない。

 どう見てもシルフィードは苦しんでいるように見えた。


 魔王の言葉通り、無理な成長を強引に行ったせいでシルフィードはこの後死ぬのだろう。

 だが、死ぬまでの時間、俺達を殺すのには十分余裕がある。

 魔王は、おそらくそう言っているのだ。


 クソッ、何か手を打たなければ。


 魔力のある限り、禁術魔法を放ち続ける。


 だが、俺の攻撃はいとも簡単に防がれてしまう。


≪仲間のいない勇者など、取るに足らぬ。もう、同じ過ちは繰り返さないのだ。我が完全に復活した暁には、この世界を闇に染め上げてみせよう≫


 魔王がそう言い放った直後。

 黒いオーラは消え去った。


 先ほどまで恐ろしい存在感を放ち続けていたというのに、一瞬にして、この場から消失した。


 成長を遂げた、シルフィードを残して。


「リ゛イ゛イ゛ィ゛ィ゛ィ゛…………リ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛――――ッ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔力を剥がせれば良いんだろうけど、無理か・・・
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