040 新鮮な情報は力だと皇帝陛下が言ってた気がする
「なるほど。襲撃を受け始めた時からどうもシルフィードの成長が完全に停滞しており不思議に思っておりましたが。リリー勇爵様が戦っておられたおかげですな」
ダニエル大佐がウンウンと頷きながらそう言った。
というか、もう勇爵扱いしている。
勇者パーティーの闘戦士であるから間違いないと思うけど。
しかし、なるほど。
倒せなくとも、禁術魔法の使えるリリーのおかげでシルフィードの成長を止めることができていたらしい。
本来であればもう少し成長を遂げたシルフィードと戦うはずだったが、これはかなりお手柄だ。
さらに、攻撃の手段が俺の攻撃系統の禁術魔法だけでなく、強化されたリリーの肉弾戦が追加される。
リリーだけでもシルフィードの成長を完全に停滞させるほどなのだ。
俺の戦力とリンシアの補助を加えれば、かなりの勝算があるのではないかと思われる。
「今日はもう日が暮れそうですし、夜間の戦闘は危険を伴います。作戦の実行はあすにするのが得策でしょう」
「リンシア勇爵様の言う通りですな」
「俺も異論はないよ」
結論は出た。
明日、俺達はシルフィードの討伐を行う。
「と、思ったんだけど。リリーのことを含めて皇帝陛下に連絡しなくていいのか?」
新たな勇者パーティーである闘戦士が見つかったこともそうだし、独断で話を進めていい物なのだろうか。
一度皇帝陛下に報告をした方がいいようにも思える。
通常の馬車だと移動にかなり時間がかかるし……。
魔導車で一度帝都まで戻るか?
「心配には及びません、アレクシス勇爵様」
「というと?」
「この防衛施設には帝都に即時報告を行える魔道具が備え付けられておりますからな」
即時報告ということは、つまり移動する必要がないということか?
「こういった大きい施設には緊急事態に備え、遠隔で皇帝陛下と会話できるようになってるんです。魔道具がかなり大きいので、さすがに持ち歩くことはできませんけれど」
なんだその魔道具は!?
離れた場所の相手と即座に会話ができる……?
便利な魔法が溢れていた王国だが、そのような魔道具は存在しなかった。
せいぜい声を大きくして遠くまで聞こえるようになる魔法だけだ。
持ち歩きはできないとはいえ、かなり離れた帝都と即座に連絡ができるというのは常識を外れている。
もはや帝国は攻撃系統だけではなく、魔法開発技術も王国を越えてるんじゃないのか?
まあ、今は植民地なので帝国領なのだけど。
「皇帝陛下への報告は後ほど行いますので、勇爵様がたは明日に備えお休みください。各自、個室に案内しましょう」
さすがダニエル大佐、仕事ができる。
というか、勇者パーティー専用の個室もこの防衛拠点には存在するらしい。
なんだか勇者パーティーありきで準備が整えられてる気がする。
魔王討伐に備えてきた国なのだから、当たり前といえば当たり前か。
どうやら、係り者のが案内してくれるらしい。
やっとのことでリリーが俺の上から降りてくれた。
非常に危険な状態だった。
「それではアレクシス様、今夜も――」
「お邪魔は無しだ。明日は大事な戦いなんだし、ゆっくり休もう」
「それは……確かに。差し出がましことを申し上げました」
ただでさえリリーのせいで危険な状況なのに、今夜もリンシアが攻めて来れば俺はどうなってしまうかわからない。
素直に引き下がってくれて助かった。
……ホントに来ないよな?




