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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
36/200

036 あの時差し伸べられた手を、今度は俺が

 徐々にダメージを与えていく。

 死ななければリンシアの治癒魔法で即回復できるため、手加減はなしだ。

 小柄の少女に攻撃を加えるのは気が引けるが……そんなことは言っていられない。

 むしろ手加減してたら俺がやられる。


 突如俺のパワーが上昇したことに、かなり驚いているようだ。

 明確に隙がわかる。


 このまま攻め込んで、一旦落ち着かせ――、


「ぐるるるるぅぅぅあああぁぁぁ――――っ!」


 ちょ、まった!

 まだパワーが上昇するのか!?


 ダブルで肉体強化魔法がかかっている俺に順応してきている!


「リリーは! 負けない――っ!」


 順応どころか、もはや互角だ。

 こんな小柄な少女の一体どこに、こんな力が眠っているというのだ。


 考えられる理由は――、俺と同類という可能性。


「落ち着け! 俺は敵じゃない!」

「うがああああぁぁ――――っ!」


 もはや聞く耳を持っていない。

 その大きな耳は飾りかと言いたいところだが、彼女も必死なのだろう。


「俺と君の目的は同じだ!」


 きっと誰にも頼らず、一人で戦っていたんだ。


「仲間がやられて辛いだろ! 憎いだろ! 仇を討ちたいと思ってるんだろ!」


 小さな少女は、一心不乱に命を燃やし続けている。


「ぐううううううぅぅぅぅぅ――――っ!」


 辛いときは、一人で抱え込むのが一番よくない。

 リンシアが俺に手を差し伸べてくれたように、彼女にも手を差し伸べる存在が必要だ。


 眼に見えて彼女の動きが鈍くなっていくのがわかった。

 それもそうだろう。

 俺からの攻撃に加え、これだけの出力を維持し続けるのは簡単ではない。


 対して俺はリンシアから肉体強化の補助を受けている上に、治癒魔法で即時回復まで行っている。

 長期戦になれば俺が有利になるのは明らかだ。


「一人で背負い込むな!」


 発破をかけるように、別の禁術魔法を準備する。

 雷系統の魔法であるが、攻撃に用いるのではなく、ちょっと特殊な使い方をする。


 もはや俺の動きに付いてこれなくなった彼女の肩を左手で掴み、そのまま倒れている巨木の幹まで押し込んだ。


 巨木を背に、手も足も出なくなった彼女に俺の影が落ちる。

 その眼は、絶望に染まっていた。


 俺が右手を振り上げ殴るポーズをすると、彼女はぐっと眼を瞑る。


 ここで禁術魔法を使う。


 雷系統の魔法を人間に使うと、筋肉が収縮することがわかっている。

 王国では微弱な雷を利用した便利な魔法もかなりあった。


 最大まで強化された俺の肉体であれば、最弱の威力で放つ雷系統の禁術魔法に耐えることができる。

 すなわち、肉体強化状態から放たれるパンチが、禁術魔法でさらに加速されるのだ。


 放たれたパンチは彼女の頭の横を通過し、後ろに存在した巨木を――跡形もなく粉砕、消滅させた。


 相手より強いことを示すには、より大きな力を見せればいい。

 単純なことだ。


「俺はよそ者かもしれない。だが、君より強い。足手まといにはならない」


 彼女はゆっくりと眼を開き、巨木が消えていることに驚愕の表情を浮かべる。

 再び俺の顔を見た彼女に、強い視線を向けた。


「だから、一緒にアイツを倒そう。一人では無理でも、一緒なら必ず倒せる」


 大きく眼を見開いた彼女だが、やがて顔がしわくちゃになり、


「ぅ……うぐ……うわぁぁぁぁぁ――――――ん!」


 大声で泣き始めた。


 え、いや、ちょ!

 そんな、泣かせるつもりはなかったんだけどな。


「あーあ、泣かせちゃいましたね?」


 背後から歩いてきたリンシアが追い打ちをかける。


「いや、そういうつもりじゃなくて!」

「わかってますよ。まずはこの子を治療しないといけませんね」


 そう言いながらリンシアは彼女を優しく抱擁し、治癒魔法をかけはじめた。

 彼女は顔が埋もれてちょっと苦しそうだ。


 何に埋もれたかって?


 男の夢にだよ。

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