028 引きこもりから下僕にジョブチェンジ
『我が調子に乗っておりました。アレクシス様、リンシア様に従います……』
「はい、知ってることを全部吐いてもらいますからね。逃げようとは思わないことです、もう二十セットいきますか?」
『従います……従いますのでどうか……もう……ご勘弁を……』
完全に心が折れたようだ。
翼を折りたたみ、虚ろな目でリンシアに従っている。
リンシアが聞き出した内容によると、過去に魔王が存在した頃の生き残りであることは間違いないらしい。
いったい、どこに居たんだという話だが、誰も立ち寄らない山奥でひっそりと暮らしていたとのこと。
なんでも、前回の勇者パーティーに喧嘩を売ったら見事に返り討ちに遭い、重傷を負ったらしい。
空を飛び回れる自分の方が優位だと思っていたら、大魔法使いドラトニスの雷魔法で撃ち落とされた。
おめおめと逃げ出し、怯えながら傷を癒していると魔王も倒されてしまい。
いまさら街に出現しても自分一人で何ができるのかと自暴自棄になり、引きこもり生活を続けていた。
そして時が流れ、魔王の復活を感じ取る。
さすがにこれだけの時間が経過していれば、自分を撃ち落とした大魔法使いも寿命で死んでいるだろうと思い、引きこもりから脱却した。
魔王の魔力が色濃く滲みだしている場所へやってきてみると、魔力の受け皿である魔精霊が存在しないことに気が付いた。
俺が倒したからな。
しめしめと思ったドラゴンは、滲みだす魔力を吸い上げ、我が物顔で王国で暴れていたところ……俺達がやってきたらしい。
王城付近に居たのは、一番高い建物を制圧すれば大物感が出そうだという、なんとも小物臭い理由だった。
見かけによらず、なんとやら。
ちなみに、魔物と魔精霊では存在としての格が違う。
魔精霊は魔王に近い力を身に着けるまで成長するが、魔物ではそこまでの成長は望めない。
魔精霊用の魔力を吸い取れば、ワンチャン強くなれると思ったとのこと。
魔精霊を討ち滅ぼす禁術魔法に、魔物であるドラゴンが敵うはずがなかったのだ。
「でもさ、勇者の物語ではドラゴンは強敵として描かれてなかったか?」
『我は知らぬ……人間が勝手にそう描いたのであろう……。勇者パーティーが現れるまで、我を見た目だけで恐れる生物は多かったからな……』
恐ろしい見た目だから、勇者の物語を紡ぐ人たちが勝手に内容を脚色したのかもしれない。
魔精霊よりドラゴンの方が絵になる。
拍子抜けだけど、仕方ないね。
「アレクシス! まさかドラゴンを手名付けるとは! いやはや、一時はゴミだと思ったが、いい買い物をした!」
背後から、そう叫ぶグランドル伯爵の声が響いた。
以前の俺をゴミだと思っていたことを隠そうともしていない。
振り返り、グランドル伯爵に視線を向けると、密偵の二人に拘束されている。
視線が合っておらず、もはや正気ではないように見えた。
「グランドル伯――」
「グランドル伯爵様ですね、国王陛下の元へ案内していただけますか?」
俺が名前を呼ぶ前に、リンシアがそう言い放った。
「誰だ貴様は、まあいい。国王陛下がお前を及びなのだ。今すぐ付いてこい」
グランドル伯爵はそう言って、拘束された状態のまま歩きだす。
「アレクシス様、お気持ちはわかりますが……。今は我慢なさってください。この国の代表ともお話をしたいので」
「わかってる、大丈夫だよ」
俺の返事に、リンシアはニコリとした表情で頷いた。
グランドル伯爵の後を追って、国王陛下の元へ向かう。




