表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
25/200

025 VSドラゴン

 俺が思い悩んでいる間に、魔導車は王都へと到着した。

 本当に到着してるよ。


 見覚えのある街並みが広がり、中央にそびえ立つ城。

 その城の屋根の上、我が物顔で火を吹いているドラゴン。


 赤い鱗で身を包み、二対の巨大な翼をはためかせる姿は、間違いなく勇者の物語に出てきたドラゴンそのものだ。


 住民は既に避難を行なったのか、周囲には見当たらない。

 確かに、あんな巨大な生物が城を占拠していたんじゃ、険悪な関係の帝国にすがりたくもなるか。


「さて、アレクシス様。悪い子にお仕置きしましょう」

「ああ、そうだな」


 もう俺は帝国の人間だ。王国がどうなろうと知ったことではない、と言いたいところだが。

 困っている人がいるのであれば黙ってはいない。

 再び魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらすことが俺の……俺たちの役目なのだから。


 ドラゴンに向けて大魔法使いの杖を構えた。

 奥底に眠る魔力を捻り出し、魔精霊イフリートの時に使用した禁術魔法の感覚を思い出す。


 敵は現在、高い屋根の上だ。

 つまり、遠距離攻撃を放つ必要がある。


 禁術魔法術式を展開し、膨大な魔力を杖に流し込んだ。


「――ファイアボール」


 杖の先から赤い魔法陣が展開され――渦巻く炎が球を作り上げる。

 これは初級魔法のファイアボールではない。


 禁術魔法のファイアボールだ。


 魔精霊イフリートの出したファイアボールより遥かに大きく、直径は約二メートルにも及ぶ。


 凄まじい熱量であるが、完璧な魔力コントロールにより圧縮された魔法は周囲に熱を放出しない。

 小さな魔力コントロールは全くできなかった俺だが、巨大な魔力制御は息をするようにできるようだ。


 いや、おそらく俺だけの力ではない。

 リンシアが補助系統の魔法により、俺の魔法に補正がかかるよう手助けしてくれている。

 それに加え、帝国で支給された大魔法使いの杖。


 消費魔力が最小限に抑えられた状況で、最大限の効果を持つ魔法が発動できた。

 この規模であれば無限に撃てそうである。


 ドラゴンに向けて、生成したファイアボールを勢いよく放った。

 豪速で飛翔するファイアボールは――ドラゴンの翼を掠めて空の彼方へと消え去る。


「クッ、避けられたか」

「かなり距離がありましたからね。そう簡単に倒せる相手ではないということでしょう」


 その方が燃えるというものだ。

 ドラゴンは俺たちの存在に気がついたのか、こちらに向けて咆哮をする。


 杖を構え、次の魔法を――、


「アレクシス……お前、本当に魔法を……」


 聞き覚えのある声が、俺の耳を貫いた。


 振り向くと、そこにいたのは。


「グランドル……伯爵……」

「ああ、私だ。探したぞ……一体どこをほっつき歩いてたんだ」


 全身汚れ切ったみすぼらしい姿のグランドル伯爵が立っていた。

 顔には狂気を孕んでいるようにも見える。


「まったく、手を煩わせよって、お前は私の“物”なのだぞ。国王陛下がお呼びだ、さあついて来い」

「――――」


 この人は、この後に及んでまだ俺のことを所有物だと考えているのか?


 俺の存在を亡き者にして。


 二度と顔を見せるなと言い放ったのにも関わらず。


「アレクシス様!」


 刹那、激しい炎が俺に迫っていた。

 これは、ドラゴンのブレスだ。


 マズイ、マズイマズイマズイ――!


 グランドル伯爵に気を取られ、ドラゴンに攻撃の隙を与えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 悪い方向での予想通りですね 魔法が、使えるようになったら手のひら返しするとは思ったけど、物扱いか・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ