023 勇者パーティー専用
「あの、馬車の方へ行かないのか?」
早急に王国を向かうということで、馬車に乗ってすぐにでも移動をするのかと思いきや宮殿の奥へと進んでいく。
「表の馬車、偽装用の馬車では速度が出ません。今回は急務ということもあり、別の手段にて王国へ向かいます」
ほう、別の手段とな。
今回の訪問は秘密裏に行うものではなく、王国からの正式な要請であるため偽装する必要が無い。
つまり、堂々と入国できるわけだ。
今まで正式に王国から迎え入れられることなんて無かったらしいので、この際、帝国の技術力をまじまじと見せつけるとのこと。
何やら厳重に守られている扉の前に到着した。
密偵が鍵を開け、扉を開くと、
「なんだ……ここは……」
かなり広い空間に、様々な道具のような物が設置されている。
馬車のようなものから、よくわからないからくりまで。
剣や杖なんかも置いてある。
「これこそが、対魔王に備えた帝国の魔道具庫となります」
魔道具というと……魔力を込めながら魔法術式を展開することで動作する道具のことだ。
王国でも便利な魔法を開発する際に、よく魔道具が用いられていた。
俺は一切使えなかったけど。
ここに置かれている魔道具は、全て魔王と戦う勇者パーティーのために帝国が長年研究を続けてきた品々であるらしい。
たとえば、魔法使いの杖であれば消費魔力を抑え、威力を向上させるだなんて凄まじい効果を持っていたりする。
ローブに至っては、魔力を流し続ける事で並大抵の攻撃では一切傷がつかないほど頑丈になったり。
魔力で動く馬車、魔導車は馬車の何倍ものスピードで走ることができるそうだ。
常識が覆るほどの性能を持った品々であるが、どれも禁術魔法の術式がトリガーとなっている。
消費魔力が激しすぎるため、俺やリンシアのように膨大な魔力を持っていなければ扱うことすらできないとのこと。
「アレクシス勇爵様、こちらをどうぞ」
密偵に大魔法使い専用装備を手渡され、身に着けた。
ちょっと見た目が豪華すぎない?
かなりハデである。
リンシアのローブも大聖女用に作られたものらしいけど、こちらはシンプルだ。
俺のローブもあれぐらいシンプルでいいんだけどな……。
魔導車に乗り込むと、内装はかなり豪華な仕様になっていた。
まさに貴族の馬車といった印象である。
車内中央に設置されているコアに指定された魔法術式と魔力を流し込むように言われ、リンシアと共に実行する。
リンシアは「初めての共同作業ですね」と喜んでいた。
魔力が流れ始めた魔導車が淡い青色に輝き始める。
魔力供給は俺とリンシアで行い、操縦は密偵が行ってくれるらしい。
魔導車がゆっくりと動き始めると、魔道具庫の奥の壁が開き、外へと通じた。
なるほど、ここから直接外に出れるって訳だ。
魔導車が外に出たと思った瞬間。
周囲の光景が目まぐるしく変わった。
は……なんだこのスピードは!?




