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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第四章
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エピローグ

 激しい戦いにより、帝都は見る影もなく崩壊してしまった。

 十年たった今でもまだ復興は続いているが、以前の活気をかなり取り戻し始めた。


 一時は神にまで上り詰めはしたものの、神としてどうやってこの世界を治めればいいかなど知るはずがない。

 ということで神の力はアーネリアフィリスとシュレストネレスに返上し、俺は元の人間に戻ったというわけだ。

 シュレストネレスも心を入れ替え、人と向き合う努力をしているらしい。

 最近やたら精霊を目にするようになったのはそのせいだろう。


 俺は今、どういったポジションかというと、皇帝陛下の夫、つまり皇婿。

 戦いの後、正式にニーナがオスヴァルト皇帝陛下から皇位を授かった。初代皇帝陛下であるアディソン以来の女性陛下だ。

 俺は婿として未だにあたふたしているニーナを支えている。

 もちろん、リンシアとリリー、それからアンナも。

 一応、妾という立ち位置だが、俺たちの仲は地位に縛られない、ぶっちゃけかなりアバウトだ。

 というか、皇帝陛下じゃなくて皇婿が妾を複数持つってどうなんだろう。

 国のトップが許可してるんだから仕方ないね。


 帝都が甚大な被害を受けたということで、これ見よがしに攻め込んでくる国や、元王国である植民地で反乱があったが。

 獣として復活したドラトウスとドラキュリアがすぐに駆け付けてくれて、一切の血を流さず瞬時に沈静化した。

 やはり君らは便利だよ。


 世界も平和に向けて歩みを進めている。

 そんな実感を噛みしめながら、俺は建て替えられた帝国宮殿でまったりと魔法の研究したり、ズッコンバッコンしたりする毎日を送っている。


「なあ親父、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ん、どうした。ドラニス」


 そう、俺に子供ができた。

 めっちゃできた。

 すごい大家族だ。

 ニーナとの間に四人、リンシアとの間に三人、アンナとの間に三人。そしてリリーは先日八人目を出産したところだ。

 子だくさんである。


 今話しかけてきたのはアンナとの間に生まれた長男、ドラニスだ。


「俺、転生者なのか……?」

「ちっ、もう記憶が戻ったか」

「この親父、舌打ちしやがった!?」


 いやまあ、俺が仕込んだことだからいつかこの日がくるのはわかってたんだけど。

 ああ、もうかわいい息子である時間は終わってしまうのか。


「どういうことだ、今朝から俺じゃない人物の記憶がどんどん浮かび上がってくる」

「そりゃまあ、だってお前。ドラトニスの生まれ変わりなんだから」

「思い出した内容だとドラトニスは消えたはずじゃないのか……?」


 ドラトニスはあの時消えた。

 消えたはずだった。が、アーネリアフィリスが勇者パーティーとして今まで苦労をかけたから願いを叶えてやると言ってきたもんだから、神様にしかできないことをお願いした。


「魂から分離されて消滅しかかってた過去の勇者パーティーの記憶を保護して、新たな魂をアーネリアフィリスが作り上げるときに組み込んでもらったんだよ」

「さらっと、とんでもないこと言いやがったな?」


 過去の争いで獣は全滅してしまった。

 つまり、獣の魂はすべてパーになってしまったわけだ。

 獣の概念を取り戻したアーネリアフィリスは、せっせと新しい魂を作り上げている最中なのである。

 なので、その魂の四つ分。

 願いを聞いてくれるというもんだから、保護した記憶を組み込んでドラトニス、アディソン、コルネリア、ミミーの生まれ変わりを依頼した。

 アーネリアフィリスが生まれ変わりさせると獣になってしまうので、分が悪いシュレストネレスも全面協力してくれたってわけだ。


 ちなみに俺がドラゴンから人に生まれ変わったのは人神柱が邪神と変り果て、人の概念が放置されてたのでアーネリアフィリスがソレを利用したとのこと。


「ちなみにアディソンはニーナの長女としてアディ、コルネリアはリンシアの長女としてコルニ、ミミーはリリーの長女としてミリーてな感じだ。ドラニスが色々思い出したってことは他もそろそろか」

「マジかよ……」


 他の三人はよしとして、一番反発してきそうなのがドラニスだと思うのだが……果たしてどう出るか。


「なあ、どうして俺を生まれ変わらせようと思ったんだ?」

「おっと、余計な事しやがってとか言われるのかと思った」

「言ってほしかったのか? 余計な事しやがって」

「なんかごめん」

「で、理由は?」


 ついこないだまで鼻くそほじってたとは思えないほどの変わりようだ。

 理由としては、そうだな……。


「童貞のままはかわいそうだなって」

「真面目に答えろ」

「ちょ、待て、落ち着け! 魔法使うな! それ勇者パーティー以外が使っちゃいけない禁術魔法だぞ!」


 危うく丸焼きにされるとこだった。

 ドラトニスの生まれ変わりということで保持している魔力量は禁術級、初級魔法は使えないけど、ヤバイ魔法は使える危険な少年だ。


「真面目に答えると、アレだ。過去に囚われず、好きに生きろってことだよ」

「それって」

「そ、ドラトニスが俺に言った言葉だ。で、俺は思ったんだよ。お前こそ過去に囚われず好きに生きろよって」


 永遠とも思える時をたった一人で過ごしたんだ。

 俺も追体験したけど、想像を絶する苦痛。だから、ご褒美ぐらいあってもいいと思う。


「俺がアレクシスとして好きに生きているように。これからお前はドラニスとして好きに生きるんだ。生まれ変わりだったとしても過去なんて関係ない、ドラニスはドラニスだ」

「……親父」


 神になって世界をリセットするなんて言い出したらさすがに止めるけど。


「パーパーッ!」


 おっと、何やら叫びながらこちらに走ってくる人物が。


「どうしたアディ、そんな怖い顔して」

「どうしたもこうしたもあるもんですか! どゆこと、アタシ生まれ変わりだったの!? ってドドド、ドラニス! い、いるんならいるっていいなさいよ!」

「いるぞ」

「遅いわよ!」

「んな理不尽な!?」


 ニーナとの間に生まれた長女アディも記憶を取り戻し始めたか。

 アディはうんと小さい頃からドラニスを気にかけている、ツンデレしている。

 記憶を取り戻したのなら、そんな仲になるのは時間の問題かな。


「ちち、ミリーにも説明を要求する」

「そうですよ、お父様。返答次第ではお母様に言いつけますから」


 気が付けばリリーの長女ミリーとリンシアの長女コル二も駆け付けていた。

 そろいもそろって、同時に思い出すなんて。

 あとリンシアに言いつけるのだけはやめてくれ、怒ったらマジで怖いから。


「仕方ない、もっかい最初から説明するか」

「俺さっき聞いたから帰っていい?」

「駄目にきまってるでしょ!」

「ミリーが拘束する」

「一緒に聞きましょうね? ドラニス様」


 いやぁ、みんなまだまだ子供だけどしっかりマークしてらっしゃる。


「それじゃあ改めて、俺が大好きなハッピーエンドに至るまでを話そうじゃないか」




 禁術の大魔法使い END

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