020 寝室での語らい
完全に透けているネグリジェの下に、巨大な胸を包む下着がクッキリと見える。
どうやら着やせするタイプであるのか、想像以上にグラマラスだ。
ローブを身にまとっている状況でも大きいと思ったが、脱ぐとすごい。
すごい。
透き通るような綺麗な肌が薄暗い空間に浮かび上がり、なんとも魅力的で、
「さあ、アレクシス様。こちらにいらしてください」
素晴らしい光景が広がって……え、あっ。
「はっ、はいただいま!」
リンシアの言われるがままに、ベッドの上に腰かける。
腰かけてしまった。
どうするんだよ、これ。
え、というかどうして寝室にいるの?
俺に授けられた屋敷だよね?
「……どうしてここに?」
「帝都に着いたらゆっくりとお話ししようと約束したではありませんか」
どう考えてもゆっくりお話しするような恰好じゃない。
別の意味でゆっくりするような雰囲気である。
「お話って……えっと。どんな話をしようか」
なんだかいい匂いがする。
流されるな、心を落ち着かせろ。
明日から頑張ろうと意気込んだところじゃないか、今から頑張ってどうする。
「そうですねぇ。アレクシス様のことを、もっと聞かせてほしいです」
「俺のこと……?」
視線を向けると、凄まじく胸を強調されながら迫ってきたので視線を戻した。
「ええ。どんな場所で産まれて、どんな風に育って。どんな経験をして、そして何を思ってわたしの手を握ってくれたのか。詳しく聞かせてくださいますか?」
俺の過去か。
貧しい生まれで生活は苦しかった。
でも、家族がいればそれでいいと思っていた。
小さいけれど、幸せを感じていたんだ。
けど、そんな幸せも脆く崩れ去る。
両親を失い、グランドル伯爵に引き取られ、勇者の生まれ変わりだとはやし立てられ。
今思えば誰も俺を見てなんていなかった。
俺の中に眠る膨大な魔力、勇者という偶像を見ていたに過ぎない。
本当の俺には誰も興味を持ってなんかいなかった。
俺はただの道具でしかなかったのだ。
だからこそ、魔法が使えないと分かったとたんに手のひらを返され。
王国という国に存在しない人間とされてしまった。
「やっぱり、思った通りの人です」
リンシアは俺の話にうんうんと頷き、時には涙ぐんでいた。
「思った通り?」
「素敵なひとだってことです」
「俺はそんな素敵な人間じゃない……」
「少なくとも、わたしにとっては素敵ですよ」
どうしてこうまでもリンシアは優しく接してくれるのだろうか。
隣に座るリンシアに再び視線を向けると、かなり際どいポーズをしていたので視線を戻した。
言動のギャップが激しい!
「わたし、勇者の物語に出てくる大魔法使いドラトニス様に憧れを抱いていたんです」
こんどは、リンシアが語り始めた。
「ドラトニス様に?」
「ええ。わたしは生まれつき膨大な魔力を持っていましたから。勇者の物語を聞いて、強力な魔法を使う大魔法使いのようにわたしもなりたいって思いました」
物語の人物への憧れ、か。
王国でも勇者の物語は人気だったが、誰も勇者のようになりたいと思う者はいなかった。
あくまでも、娯楽の一種として消費されていたように感じる。
「結局、わたしは攻撃系統が使えず。大聖女という立ち位置となりましたが……それでも、大魔法使いドラトニス様と肩を並べる存在になれたのだと思うと嬉しかったです」




