191 言ったよな、まだ俺が敵じゃないって思ってるのかと
バンバン攻撃が飛んでくる。魔力量が心配ないレベルとはいえ、乱発しすぎだろ。
対抗して俺も魔法を放つ。
不意打ちと言動にちょっとイラっとしたので手加減なしでぶっ放していく。
「おうおう、やっと体が温まってきたのかって――あぶねぇな、話してる最中に卑怯だろ!」
「不意打ちぶっ放したヤツが何言ってんだ!?」
「卑怯ってのは誉め言葉だよ!」
「そりゃどうも!」
魔法の打ち合いはさらに激化していく……というか、ドラトニス。俺に魔法を放つフリしてジュレストネレスに向けてないか?
ジュレストネレスに届く前に攻撃は全部離散してしまっているけど、あからさまに魔法の余波が上空へと流されている。
「惜しい、もうちょいだったな」とか呟いてるし。
うっぷん晴らしだろうか、作戦がバレたりしないよな?
そんな戦いを続けているとだいぶペースが掴めてきた。
本気で魔法を撃ってくるけど、確実によけれるレベルだ。
いや、手を抜いてるな?
余裕ができたので周囲の様子を確認すると、うん、勇者同士の戦いはやっちゃいけないのがわかった。
赤い閃光が二つ、凄まじい速度でぶつかり合っている。ぶっちゃけ俺には手に負えないレベルだ。
そして帝都が穴だらけになってる。これどうやって復興するんだよ。
遠くのほうではリリーとミミーが変身したと思われる巨大な二対の獣が戦っていた。
そしてリンシアとコルネリアは……なんで大聖女が肉弾戦してるんだ?
二人とも素晴らしいたわわをお持ちなので、動くたびにバルンバルン揺れている。
殴りあうパワー系大聖女、見るんじゃなかった。
「アレクシス、そろそろだ」
ふと耳元でトラトニスがそう囁く。
直後、俺の中に眠るブラックボックスが疼いた。
魔法の構築が終わったのだろう、ドッと情報があふれ出してくるのがわかる。
が、ジュレストネレス召喚のトリガーとなったときに情報過多の苦痛を経験している。今回はなんとか耐えられそうだ。
「おわっ!?」
勢いよく体が引っ張られるのがわかった。
抵抗しようにも抗うことのできない強制力のようなもので俺の体が引っ張られていく。
見るとドラトニスも同じように移動をしていた。
俺とドラトニスだけじゃない、リンシアとリリーとニーナ。そしてコルネリアとミミーとアディソンも。
過去と現在の勇者パーティーが全員、一か所に集められていく。
ここは……帝都の中心。ジュレストネレス召喚魔方陣の中心地だ。
その中心を囲うように八人の勇者パーティーは円を描いて浮かび上がっている。
声を出すことは叶わない、リンシアもリリーもニーナも驚いた表情をしていた。
向こう側の記憶が入ってないメンバーは無表情のようだけど、ドラトニスは……。
――なんだ、その表情は。
「なあアレクシス、人ってのはいつまで経っても学ばねぇよな。だからジュレストネレスはリセットさせたかったんだよ。んでも、どうせリセットすんなら俺が理想郷を作ってもいいよな」