190 戦闘再開
「ぶっちゃけ、お前がこの地下空間に到着したとき、だれか一人でも欠けてたらその時点で殺そうと思ってた」
「殺そうって……?」
「お前を殺そうと思ってたって話だ」
「なっ!?」
嘘をついているといった雰囲気ではない。
「今回の魔王はぶっちゃけ勇者一人の力でごり押しできるレベルじゃない。聖剣の攻撃を防げる時点で普通じゃないんだよ」
「つまり……誰か一人でも勇者パーティーが欠けてたら勝てる見込みが無かったってことか?」
「そゆこと。というか、魔王に負けてもゲームオーバー、誰一人欠けずに魔精霊を全部倒してもジュレストネレス召喚でゲームオーバー」
「魔王が最初から俺たちの負けが決まってるって言ってたのはソレか」
ドラトニスがコクリと頷く。
「ジュレストネレスは人の神なだけあって人の心を読むことができる。が、ホムンクルスである俺の深層までは覗けなかったみたいだ。だからこうやって裏をかけるんだけどな。今は受肉したから気を付けないといけないけど」
ホムンクルスは神にとってもイレギュラーな存在であったらしい。
イレギュラーで突発的な存在だからこそ、ジュレストネレスは自分の召喚に利用してやろうと策略したようだが、ドラトニスがその裏をかいて行動していると。
「てなわけで、地上に戻るぞ。今ジュレストネレスは世界の支配に夢中だから俺たちの存在なんて忘れてるだろうけど、長時間存在を消してると怪しまれる」
「地上に戻るのはいいけど、俺はどうすればいい?」
「んなもん、俺と全力バトルに決まってんだろ」
「…………」
「不満そうな顔するなって」
一応、敵対関係であることを偽装するため戦うと。
精霊化した状態だと手加減不能だし、そもそも精霊化して戦わないと共に勇者であるニーナとアディソンの戦いの余波で即死しかねない。
戦闘中にドラトニスがアーネリアフィリス召喚魔法を構築し、俺を含む勇者パーティーをトリガーとして魔法を発動させる算段だ。
ホムンクルス経験が長かったためか、ドラトニスは無意識化での魔法構築ができるようになっているらしい。
俺に悟られずに魔法を発動できたのはそのためだろう。
訳が分からん。
「さ、行くぞ」
ドラトニスがそう言った瞬間、肉体強化魔法が付与されたのがわかった。
見ると、先ほどと同じく黒と白の光と纏うドラトニスの姿が。
俺も続いて精霊化した瞬間、転移魔法により視界が切り替わった。
激しい衝撃音が響く破壊された帝都、その上空に浮かぶ邪神の姿。
戦いの場に戻ってき――、
「――――ッ!?」
極太のビームをすんでのところで回避した。
危ない、少しでも回避が遅れていたらタダでは済まなかった。
ビームが飛んできた方向に視線をやると、
「おいおい大魔法使い様よ、油断してんのか? 俺の生まれ変わりってんなら、ちょっとは楽しませてくれよ! ギャハハハッ!」
アイツ、楽しんでない?