187 勇者パーティーVS勇者パーティー
直後にはドラトニスが魔法を発動していた。
今、俺が発動させている精霊化魔法と同じものだ。発案者はドラトニスなのだから発動できて当たり前なのだが……問題は俺と同時に発動しているということ。
精霊化魔法、もしくは精霊召喚魔法は同時に同じ種類の聖精霊を呼び出すことができない。
今、第一柱・聖精霊サラマンダーはニーナ。第二柱・聖精霊ジンはリリー。第三柱・聖精霊リヴァイアサンはリンシア。
そして第四柱・聖精霊ヴァルキュリアと第五柱・聖精霊カオスは俺に宿っている。
これ以上、呼び出せる聖精霊はいないはずだ。
にもかかわらず、ドラトニスたちはもれなく全員精霊化している。
勇者アディソンは全身に炎をまとい、闘戦士ミミーは小柄な体から成長し、二対の黒い翼が生えている。大聖女コルネリアは青い髪をなびかせ、水を司っていた。
そして大魔法使いドラトニスは……白と黒のオーラを放ちながら、手に一本の剣を持っている。
――魔剣フラガラッハ。
聖精霊ではなく、魔精霊を用いて精霊化したっていうのか?
「アディ、聖剣持ち相手には剣なしだと辛いだろ。これ使え」
ドラトニスはポンと魔剣フラガラッハを放り投げた。
それをアディソンが無言で受け取る。
「こーんなに隙を見せてやったのに攻撃してこないなんて。まだ俺が敵じゃないとでも思ってんのか?」
そんな言葉が聞こえたと認識した瞬間には、俺の体はぶっ飛ばされていた。
ドロリと溶けている帝都の街を破壊しながら体勢を整える。
遠くから俺の名前を叫ぶ声が聞こえる、が、あちらも開戦したのか爆発するような音が響いた。
吹き飛ばされた俺を追って、ドラトニスがもう目の前に迫っていた。
拳を握りしめ、歪んだ笑顔で俺を殴ろうとしている。
対抗して、全力で拳を返した。
ぶつかり合った拳は衝撃波を放ち、周囲に存在していた瓦礫を綺麗に吹き飛ばした。
「急展開過ぎて付いていけなかっただけだよ。大魔法使いの亡霊は俺がぶっ飛ばしてやる」
「威勢がいいのはいいことだ――ぜッ!」
激しい肉弾戦が始まった。
何が大魔法使いだと言いたいところだが、即座に魔法を放てると言ってもほんの一瞬だけ構築のための隙ができる。
並大抵の人物には突けない隙だろうが、相手は精霊化したドラトニス。容易に魔法の発動を阻止されてしまうだろう。
逆に俺も同じ条件だ。
能力は互角であると伺える。
刹那、俺とドラトニスが同時にぶっ飛ばされた。
どちらの攻撃でもなく、外的要因によるもの。
「おうおう、最強の勇者が二人も精霊化したらそりゃヤベぇよな」
どうやらニーナとアディソンが剣を交えた衝撃だったらしい。
「とんでもない状況作りやがって、大陸が吹き飛んだらどうすんだ」
「アイツらならやりかねんが、どうせジュレストネレスが全員ぶっ殺しちまうんだ。お前も、仲間も、俺も含めて全員な」
……どういうことだろうか。
「ジュレストネレスに命を貰って……また殺されるのか?」
俺の言葉にドラトニスはニヤリと笑い――、転移魔法を発動させた。