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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第四章
184/200

184 いつぶりかの対峙

 魔王城の中を移動し始める。中央に向かうにつれ、外光が無くなり暗くなっていった。

 精霊化したニーナの炎により明かりを保っている。

 威圧はさらに強まる。精霊化しているから問題なく行動できるが、生身で受けたら行動不能になりそうな、それほどの威力の心象魔法だ。


「以前の魔王城と形状は同じみたいね。こっちよ」


 ニーナが先導して入り組んだ城の中を進んでいく。

 勇者アディソンだった頃の記憶を頼りにしているらしい。

 過去の魔王は魔王城で勇者パーティーを待ち受けていたと物語に記されていたが、俺はあまり記憶が戻っていないので内部構造はサッパリだ。


 細い通路、広い通路、狭い部屋、広い部屋。かつては勇者パーティーの進行を阻むために魔物が配置されていたそうだが、今は何も存在しない。

 暗い空間が広がるだけ。

 そんな空間を抜けて――、


≪辿り着いたか≫


 魔王が存在する城の中央、黒の魔力が渦巻く大広間に到着した。

 魔精霊シルフィードと戦った時と同じ、頭に響くような嫌な声が聞こえる。

 その声の発生源。


「……魔王」


 揺らめくような黒い人型のシルエット。

 魔を統べる王たる存在が大広間の中央で待ち構えていた。


「大陸に広がった魔方陣でいったい何を召喚するつもりだ」

≪我が役目は世界を闇に染め上げること。かつてのように過ちを犯すことはない。最初から、貴様らの負けは決定していたのだ≫


 俺たちの負けは最初から決定していただと?


「言ってくれるじゃない!」

「今度は永遠に頭を冷やしますか?」

「リリー、むかむか」


 三人が魔王の言葉に反発する。

 召喚の目的は聞き出せそうにないか。

 それ以前に、心の奥からむせ返るような嫌悪感、魔王の挑発的な言葉に集中力が乱れるようだ。かなり高度で高出力の心象魔法だ。冷静でいるのが難しくなっている。


「挑発に乗るな、心が乱されてる。相手の思うつぼだ」


 敵の魔法を読み取り、レジストしてしまえば心の乱れを抑えられる。


「――っ、ごめん。飲まれるとこだった」

「それだけ俺たちを警戒してるってことだ」


 以前滅ぼされてから魔王サイドも勇者パーティー対策を練ってきているはずだ。

 高威力の魔法の打ち合いで決着がつく、とはいかないだろう。

 既に勝ちを宣言しているが、それはあの巨大な魔方陣が完成すれば終わりだという意味合いだろうか。


 ならば、それを阻止すれば。


「リンシア、リリー、ニーナ。行くぞ」


 俺の言葉に三人がそれぞれの役目を果たすため、動き出す。

 精霊化したリリーの爪、そして陽炎を纏った聖剣。それらがリンシアの補助魔法により強化され魔王に襲い掛かる。

 が――、その攻撃が魔王に届くことはない。

 あれだけの威力であっても防いでくるか。


 ならば、精霊化魔法を発動したうえでの専用魔法。

 第四柱、第五柱の力を混合させた魔法の神髄。

 連発はできないが、おそらくは聖剣の威力をも超える。


 ニーナとリリーが離脱したタイミングで、構築した魔法をぶちかます。

 複雑な模様を描く魔方陣から放たれる白と黒の光が交じり合い、強大な魔法は魔王をまるごと飲み込んだ。


 刹那、魔法は収束する。

 凄まじい威力により魔王城にはぽっかりと巨大な穴が開いていた。

 変わり果てた帝都の様子を見渡すことができるほどに。

 にもかかわらず。


≪無駄なことだ≫


 足場を失っても魔王は微動せず、そこに顕在した。

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