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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
176/200

176 欲望の果てに、終わりの始まり

 激しい魔法の猛攻は聖精霊ヴァルキュリアと聖精霊カオスにはダメージを与えす、魔精霊シェイドだけに襲いかかる。

 自分の意識した敵だけに攻撃を加える効果はドラトニスが考え出した理論だ。アレクシスとして生まれ変わって理論を思い出した俺がアレンジして使用していた、その根源となる理論形態。


 中心に向かって圧縮された魔法は姿を消し――、やがて魔精霊シェイドごとこの世から消え去った。


「ホントに一人で倒しちゃった……」

「アレクシス様ですから、このぐらい当たり前です」

「ぷいん」


 これで全ての魔精霊を倒すことができた。

 残るは魔王のみだ。いや、魔王を復活させるジュレストネレスを倒さないといけないか。


 そのための力は既に所持している、と思われる。

 ドラトニスから授けられた神の領域に到達しうる魔法の威力を目の当たりにした。

 後はやるだけだ。


 精霊化魔法を解除する。同時に聖精霊化していたドラゴンたちも元に戻った。


「何とか倒せたよ。流石に頑張り過ぎたから、少し休……」


 ……なんだ、これ。

 魔精霊シェイドを倒した付近にギラギラと輝く粒子のようなものが浮いている。

 直感で、それがあまり良い物ではないと感じた。


「アレクシス様、どうされました?」

「いや、何か変なものが――。――ッ!?」


 突如頭痛に襲われる。


「アレク!」

「ど、どうしたの!」

「今、治癒魔法をかけます!」


 リンシアが俺に治癒魔法をかけてくれるが、一向に頭痛が収まる気配がない。

 何が起こっているのか、魔法の後遺症か、周囲を確認してみると魔精霊シェイドが存在していた場所の他にギラギラと輝く光が。

 ニーナが手に持つ聖剣カラドボルグだ、聖剣から同じような光がギラギラ放たれている。

 だが、こちらの光からは嫌な感じがしない。


「精霊の……魔力……?」


 頭痛と共に流れ込んでくる情報でふと理解した。

 これは精霊の魔力だ。通常の人には到底扱うことができない、神より授けられた召喚魔法で変換しなければ大変危険な魔力の本体。

 精霊とのハーフでもなければ通常可視することすら不可能な――


「ぐっが……あぁぁあああああ――――――――――ッ!」

「アレクシス! どうしよ、治癒魔法が効いてない!」

「そんな、アレクシス様!」


 このままでは本当に死ぬ、情報を受け止められない。


「リ……リ゛リ゛ー……肉体……きょ――うか魔法を……」

「ん!」


 リリーの魔法により強靭な肉体に作り替えられるが、それだけでは足りない。精霊化魔法により再び第五柱・聖精霊カオスを呼び寄せる。


 直後、何かが繋がった。


 俺の身体は今、幾度も使用した精霊化魔法の影響で特別なエルフと同じような構造になっている。

 であるからこそ、精霊の魔力を可視できるようになった。

 

 さらに精霊化魔法によって、より精霊に近づいている状況。

 ギラギラと漂っている精霊の魔力がどんなものなのか、把握することができた。


 精霊……上位世界の魔力は本来触れることができない。

 それを無理やり人間に扱えるように変換したのが禁術魔法。

 精霊の魔力が充填された聖剣は、単体で魔力変換が行える魔道具のようなものなのか。

 魔精霊が死ぬと精霊の残留魔力がこの世界に残る。その魔力が何かの魔法を発動させようとしているらしい。



 ――――まて、何だこれは。

 スタンバイになっていた、帝都の人間一斉転送の魔法が実行された。

 俺の意思とは無関係に、それだけではなく。

 ドラトニスから授けられた中身の見えない魔法理論が急速に術式を構築し始めている。


 どす黒く、悍ましく、悪意に満ちた。

 そんな魔法が発動されようとしている。


 ドラトニスは俺に何を授けたんだ……?


『俺は俺のやり方で報われるからよ』


 去り際の言葉を思い出した。

 あの時、ドラトニスは笑っていた。

 どんな笑い方だったか、今なら思い出せる。


 ――まるで魔精霊のような醜悪な笑みだった。


 刹那、俺をトリガーとして魔法が発動される。

 魔精霊が残した各地に漂う残留魔力を繋いで巨大な魔法陣が描かれているというのを理解した。

 理解してしまった、想像を絶する規模の魔法であるということを。


「召喚魔法……」


 帝都を中心に大陸をはみ出すほどに巨大に描かれた魔法陣で……一体何を召喚するつもりだ。

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