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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
172/200

172 ブラックボックス

 ドワーフ鉱山の街に魔精霊シェイドの影が落ちる。

 巨体は重力に引っ張られ、街に向かって落下し始めた。

 マズイ、マズイマズイマズイ!

 あんな巨体が落下したら街はひとたまりもない。落下地点だけでなく衝撃波により広範囲に被害が起こる。

 魔精霊シェイドの全身を一度に転移させることは不可能。

 部分的に転移させたところで残る部分の方が圧倒的に多い。被害を減らすことは難しいだろう。

 ならば。


「リリ――ッ!」

「ん!」


 俺が名前を呼んだ直後にはリリーが肉体強化魔法を発動させ、俺に付与していた。

 さすが、頼もしい限りだ。

 術式を構築し、魔法陣を展開させる。

 ドクンと俺の中の魔力が波打つ。ドラトニスに与えられた魔法により、精霊化魔法が即座に発動した。

 俺とリリーの周囲に立体的に展開された魔法陣は身体を貫き、精霊を宿した肉体に作り替えていく。


 すっと、思考の曇りが取り払われ沈着冷静となる。

 身体の中に召喚したのは第五柱・聖精霊カオスだ。同じく第五柱・魔精霊であるシェイドの巨体を街に被害のない場所までぶっ飛ばすには手加減していられない。

 そして、俺の隣で白ドラゴンの上に乗っていたリリーの姿は、純白の衣を身に纏う大人の女性の姿になっていた。

 第四柱・聖精霊ヴァルキュリアの姿だ。

 獣の耳と尻尾はそのままだが、髪の色は真っ白に染まっている。


 魔精霊シェイドが落下中、ガパリと口を開き――ゼロタイムで紫の閃光を放った。

 が、精霊化した俺とリリーはドラゴンたちの背中から跳躍し、放たれた魔精霊シェイドの魔法を振り払った。

 分解された紫の光がキラキラと宙を舞う。


 勢いを弱めず、そのまま魔精霊シェイドの懐に潜り込んだ。

 俺達を掴もうと手を伸ばそうとするが、遅い。

 拳を握りしめガラ空きの腹にパンチを喰らわせようと攻撃を放った瞬間。

 その攻撃は空を切った。


「クソッ」


 まただ。

 また転移をしやがった。

 俺達の攻撃が衝突する寸前に、さらに下へ、街の真上に転移した。

 落下エネルギーが失われたため、周囲への衝撃波は軽減されるだろう。

 だが、街はぺしゃんこになってしまう。

 軽い被害ではない。あそこには聖剣を直してくれたアグナも居るのだ。

 敵の思い通りにはさせない。


 聖精霊カオスへの精霊化を行ったことにより思考がクリアになり、さらに自分が今どのようになっているのか客観的に把握することができた。

 以前より魔力量が莫大に増えている。

 倍なんてレベルじゃない。

 精霊化魔法を何時間でも持続できそうな魔力量だ。


 魔力の供給源は……ドラトニスから授けられた中身の見えない魔法理論からだ。

 ドワーフ鉱山に存在する底の見えない巨大な穴と同じような印象を受ける。

 中身を見るだけで死んでしまうといっていた。この出力を考えうるに、やはり神の領域に突入した力であるのだろう。


 この力を以てすれば――。


 刹那、魔精霊シェイドの身体が瞬時に消えた。

 直後には遠い山間で激しい爆発が起こる。

 魔精霊シェイドの全身を転移させ、地面の中に座標を合わせてやった。

 よっしゃ、成功したぞ。

 今の爆発は魔精霊シェイドと大地が重なった反発によるものだろう。

 凄まじい土煙が立ち上っていた。

 これで倒せていたり……。


『シ゛ラ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛√﹀╲_︿╱﹀╲/╲︿_/︺╲▁︹_/﹀╲_︿╱▔︺╲/————ッ!!』


 しないようだ。

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