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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
160/200

160 知ってる

「む、アレク。戻ってきた」


 ドワーフ鉱山付近の拠点に転移した直後、凄まじいスピードでリリーが駆けつけてきた。


「ただいま、ちょっと出かけてきたよ」

「アレク、ニーナが探してた」

「ニーナが?」


 何の用だろうと思っていたら、ドタバタとニーナが走ってやってきた。


「アアア、アレクシス戻った! あの、えっと思い出したのと、それと、神託が! えっと!」

「一旦落ち着け!」


 凄い慌てようだったので、深呼吸させて落ち着かせる。

 気の利いたことにアンナがお茶を持ってきた。

 さすが元メイド。今も俺のメイドだけど。


「それでニーナ、何の用だ?」

「えっと、まずアーネリアフィリス様からまた神託があって。聖剣を完全に治すにはエルフの力が必要で、さっきエルフの一人に精霊の魔力を込められる力を授け終わったって」


 おっと、タイムリーな話じゃないか。

 というか、まだエルフに対して力を授け終わって無かったから伝えてなかっただけだろうか。


「それで、リンシアにエルフに力を貸してもらえるように交渉するようにって言われたんだけど……追い返されたんだったよね……?」

「はい、攻撃されて追い返されました」


 エルフの力が必要というのはドラトニスの話とアーネリアフィリスの神託の内容が被ることから事実なのだろう。

 アーネリアフィリスは人の事情に疎いとか言ってたけど、リンシアが人間に転生したことでエルフとの交渉がスムーズにいかないことを理解していないんじゃないのか?


「じっくり交渉してみるのもいいかもしれないが、できるだけ早く聖剣を復活させたほうがいいだろうし。俺とニーナで心象魔法を使って取り入ろう」


 手段を選んでいる暇はないからな。


「わかった。……あと、それとね。えっと……」


 ニーナが色々な方向を見ながら俺と視線を合わせない。

 何か言いたそうな雰囲気ではあるが。


「なんだ?」

「その、色々と思い出してさ。アレクシスはドラトニスだった時から色々背負い込みすぎてるなぁって思って」


 ……色々と背負い込みすぎてる、か。

 確かに、先ほど会ったドラトニスの様子をみると背負い込む気質だったのかもしれない。

 俺も少しそういった部分があるかもしれないが、出来るだけ仲間に頼るように心がけているつもりだ。

 そのままニーナの話を聞く。


「コルネリアが死んでから、ずっと一人で研究して……。アタシの想いには振り向いてくれなかった」

「それは……」


 本人からも聞いた。

 ドラトニスは大聖女コルネリアを死なせた罪悪感から、勇者アディソンの想いを受け取らなかったのだろう。


「けど、今のアレクシスならどうかな……。リリーから聞いたよ、アレクシスは三人も侍らしてるって」

「リリー」


 リリーは寝たふりをしている。

 後でお仕置きだ。


「アレクシス」

「…………」


 絶世の美少女が赤い瞳を俺に真っすぐ向けている。


「アナタは凄い、不可能だと思ったことを覆してしまう」


 全部、俺だけの力じゃない。

 けど、俺の力でもある。

 生まれ変わる前に感じたあの悔しさを。

 今度こそ同じ過ちを踏んでなるものかという強い意志を持って。

 

「ドラトニスだったときから。その時よりも、どん底で絶望していたアタシに手を差し伸べてくれた今のアレクシスが」


 はるか昔の記憶の片隅に残るあのままの表情で。


「アタシは好き」


 ニーナはそう言った。

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