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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
159/200

159 すべては

「ドラトニス、次はどうすればいい」

「素直になってくれて俺は嬉しいよ。とりあえず、人間の縛りの中でも発動可能な魔法をいくつか授ける。精霊化した状態じゃないと情報量が多すぎて頭がパンクするからな」


 だからこその聖精霊カオスか。

 カオスの力が余計な雑念を消し去り、授けられる魔法に集中することができると。

 刹那、膨大な量の理論が俺の中に流れ込んできた。

 ああ、これは確かに、通常の状態で授かれば即死だろうな。

 一秒にも満たない時間に、本百冊分以上の情報量が流れ込んでくる。

 なるほど、ホムンクルスとなったドラトニスの魔法はこの地下空間以外では効力を発揮しないのか。

 だからこそ、俺に魔法を授けて発動させようとしているんだ。


「よし、これで全部だ。一部の魔法はアレクシスを媒体に今発動させといた」

「転移魔法か? 発動はしてるみたいだが……待機中になってるぞ?」


 ドラトニスが俺を媒体に発動した転移魔法は、座標を定めて、これから転移をさせる状態で静止している。


「ああ、俺の慈悲で保険みたいなもんだよ。帝国に何かあった時、住民を安全な場所に転移させる魔法だ。俺達が作った国の住人が死ぬのは夢見が悪いからな」


 皇帝陛下の言葉を思い出す。


『帝国で何が起こったとしても、己の役目を果たす事だけを考えるように』


 つまり、帝国に住む住人を全て転移させなければならない程の事が起こる可能性があると。


「帝国に何が起こる」

「それはわからんよ、保険だって言っただろ? ジュレストネレスは人の嫌がることをよーく知ってるからな」


 魔王を復活させる神への保険か。

 備えあれば患いなしということだろう。


 他にも色々授けられたようだが……。


「ドラトニス。理論はともかく、制限がかかって内容が分からない魔法があるんだが」

「あーそれ、完全に神の領域だから見るだけで死ぬヤツ」

「物騒なもん授けてくれたな!?」

「まあほら、アーネリアフィリスからも術式を授かってパッと発動できる禁術魔法があるだろ? 同じ感じだよ、中身は分からなくても使ったら発動できる的な」

「なるほど……」

「使い時が来たら自ずと発動するから、楽しみにしとくといいさ」


 おっと、魔力が尽きそうだ。

 急いで精霊化魔法を解除する。

 第五柱ともなると、維持する消費魔力がけた違いだ。


「とりあえず、授けるもんは授けたから。もう帰っていいぞ」

「いや、急だな」

「色々とお聞きしたい話が他にもあるのですが」

「悪いが眠くてな。この時のため込んでた魔力を使ったから、魔力切れになりそうなんだよ」


 ふわぁ、とドラトニスがあくびをする。


「それは、そうか……。ありがとう、ドラトニス」

「礼を言うのはこっちのほうだぜ、アレクシス。リンシアさんも来てくれてありがとよ」


 ふいっと背を向けて、背伸びをしながらドラトニスがそう言った。


「じゃあ、俺達は帰るよ。聖剣修復のためにエルフの協力を得ないといかないし」

「ああ、次に会える時を楽しみにしてるよ。……――と一緒にな」

「ん? 最後聞き取れなかった」

「いいから、さっさと行けよこのリア充が!」

「ごめんって」


 そろそろ怒られそうなので転移魔法を発動する。


「アレクシス。お前は過去なんかに囚われるな、好きに生きろ。俺は俺のやり方で報われるからよ」


 視界が切り替わる寸前、ドラトニスはこちらを見て笑っていたような気がした。

 どんな気持ちで笑っていたのかは、俺にはわからない。

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