143 ドラゴンにのって、助けにいこう!
ドラゴンと一緒に転移を行い、ドワーフ鉱山の近くにある帝国の拠点、その入口に移動した。
「ふわぁっ! で、でかいのが出てきた!」
「おかえりなさい、アレクシス様。作戦というのは、そうですか、ドラゴンに乗って穴の中を降るのですね」
リンシア、リリー、ニーナの三人が拠点の前で待ち構えていた。
そしてさすがリンシア、ドラゴンの姿を見た瞬間俺の考えがわかったようだ。
『久しいな、リンシア様。元気であったか、我はついに神級魔物・ダークネス――』
「さ、準備はオッケーということで早速出発しようか」
『あの、我の紹介がまだ……』
「ええ、いつ敵が動き出すかわかりませんから」
「ん、美味しいお塩取りに行く」
「あの、ドラゴンがしょんぼりしちゃったよ?」
今までの言動を考えれば雑に扱われても仕方ない。
調子に乗らすと話が長いし。
というわけで、大きくなったドラゴンの背中に乗る。
そこそこトゲトゲしているので捕まる場所には困らない、これなら振り落とされる心配はないだろう。
って、なんでリリーは俺の背中にしがみついてるんだ?
当然のようにリンシアも腕にくっついてきたじゃないか。でかい。
あと、ニーナが「そこに捕まればいいのね」と言って反対側の腕にしがみつく。ちょっと薄い。
いやもう、なんだか言いつける時間がもったいない気がしたのでそのままにしておいた。
『では、ゆくぞ!』
バサリと、ドラゴンの巨大な両翼が羽ばたき、浮遊感を感じた。
あっという間に空の上である。
周囲の風景を眺めると、遠くまで連なる山脈の中央に巨大な穴が存在するのが見えた。
上空から見るとより凄い光景だな。
だが、魔精霊ウィルオウィスプとニーナが戦っていた時のことを思い出すと、聖剣が万全の状態であれば同様の穴を地面に空けることは可能だと思ってしまう。
それと同威力の魔法理論を考え出してしまったドラトニスも大概だけど。
ひとまず、魔鉱石を入手して、聖剣を修復してもらってる間にリリーに術式構築のお手伝いをしてもらおう。
ドラゴンが急降下を行い、穴の中に吸い込まれていく。
底の見えない、闇に突っ込んでいった。
先が見えないってのは、かなり不安を感じるものだ。
落ちれば助からないってのも精神をすり減らす。
鉱山で採掘をしているドワーフたちの胆力はやはりみな高いのかもしれない。
穴の入り口あたりはしっかりとした足場が存在していたが、下に進んでいくに連れて不安定で細い足場へとなっていく。
人一人通るのがやっとという場所もあるみたいだ。
「あそこですね、断裂してしまった道というのは」
リンシアが指差す先に崩れ落ちた箇所があった。
なるほど、ちょっとジャンプするぐらいでは絶対に渡れない規模で崩落が起こっているようだ。完全に道が途絶えてしまっている。
これでは戻ることはできないだろうし、逆に救助も簡単な状況ではないだろう。
取り残されたドワーフたちは、この断裂された道の先にいると思われる。
穴の壁面には、ところどころに休憩と安全が確保できるセーフティーエリアと呼ばれる横穴が掘られているらしい。
何かあったときのために、食料なども備蓄されているとのこと。
恐らくは、そこで仲間のドワーフたちが救助を待っているだろうとアグナは言っていた。