142 神級魔物・ダークネス・エンド・カースドラゴン
振り返るとそこに居たのはもちろん、リンシアが手懐けたドラゴンだ。
ドラゴン……なのだが……。
「お前、前よりデカくなってない?」
このセリフ、前にも言った気がする。
『ぬははははは! その通り、あれからずっと魔王の魔力を吸い続け、我は神級魔物・ダークネス・エンド・カースドラゴンとなったのだッ!』
魔精霊シルフィードの戦いに駆けつけてくれた時より倍ほどの大きさになっている。
それに伴って名前もかなりパワーアップしていた。
自分で言ってて恥ずかしくないのかな。
何だか全身を覆う鱗も赤色から黒色に変化している。
いやしかし、パワーアップしたのは本当なのだろう。
神級魔物・ダークネス・エンド・カースドラゴンから凄まじい圧を感じた。
召喚された瞬間の魔精霊イフリートと同等ぐらいの強さがあるんじゃないのか?
魔物でも魔力を吸い続けたら魔精霊並みに強くなれるらしい。
まあ、禁術魔法でワンパンだけど。
『ところでアレクシス様、こんなところで何をしているのだ?』
「あ、そうそう。お前に用があって来たんだよ」
『む、我に用か? 何なりと言うがいい!』
態度がデカイせいか変な喋り方になってるぞ。
それはともかく。
「お前さ、数日間ここを離れることってできる?」
『む、どういうことだ?』
「ちょっと力を貸してほしいんだけどさ。ここからかなり離れた場所でお前の力が必要なんだ」
『ほう、我の力が必要か! かまわんぞ、アレクシス様のため、存分に我の力を振るってやろう! 相手はなんだ、魔物か? それとも魔精霊か! わかったぞ、魔王だな!』
「残念だけど、戦闘の予定は無い」
『む、そうか……』
何だかちょっと残念そうにしている。
なぜドラゴンの力が必要なのかと言うと、ドワーフ鉱山の穴を降る際、背中に乗せてもらうためだ。
巨大な翼で自由に空を飛べるドラゴンであれば、足場のない絶壁が囲う穴であっても安全に降下できるのではないかと考えた。
予想外に成長をしていたので、これならば余裕で全員を背中に乗せて飛ぶことができるだろう。
「というわけで背中を貸してほしいんだけど、沸いてくる低級魔物の都合とかどうかなって思って」
『我を乗り物として使うか……いや、構わんのだが……アレクシス様なら……うむ……。我は魔物最強のドラゴンであるというのに……いやうん、アレクシス様の方が強いし……』
なんか凄くショックを受けてる。
俺には逆らえないけど、無駄にプライドが高いからモヤモヤしてるのだろう。
まあ、そんなプライドも自分より強い相手が現れたらポッキリ折れるみたいだけど。
「おーい、聞こえてる?」
『ぬ、ああ、低級魔物のことか。それについてはつい昨日魔物の掃討が終わったところだ。後五日ぐらいであれば沸きだす心配もなかろう』
ちゃんと仕事は遂行しているようだ。
そしてタイミングよく掃討も終わったと。
植民地化した王国はドラゴンが魔力を吸っているだけあって、魔物の出現自体が少なくなっているらしい。
五日ほどは安全ということらしいので、背中を貸してもらおう。