137 話は順調に進んで……ると思いこむのは止めよう
店主に紹介状を書いてもらい、お礼を言って店を後にする。
ちなみに武器は買わなかったが、部屋に飾る装飾品を買っておいた。
なんでも昨日起きた揺れで一部商品が破損し、客は避難してしまうでちょっと困ってたそうなのだ。
なので、壊れずに残っていた装飾品を買い占めると、引くほど喜ばれた。
アグナという人物はドワーフ鉱山の街のメインストリート、その中央に巨大な店を構えているらしい。
先ほどの店主の店もメインストリートにあったので、有名であるのは間違いないのだろう。
で、教えてもらった店に到達した訳だが。
こりゃまた前衛的な建物だ。
周りの建物より一際大きく、何というか見た目が迷子だ。
木材や石材が絶妙なバランスで組み合わさっており、実用性があるのかどうかは不明だが、迫力のある建物であるのは間違いない。
ドワーフはエルフ同様、寿命が人間よりかなり長いので、年を重ねたドワーフは独特なこだわりを持ったりするらしい。
「すみません、紹介状を持ってきたんですが」
「あん、紹介状だ? 見せてみろ」
建物の警備をしていると思われる、ちょっと怖面のドワーフに紹介状を渡した。
「おいこりゃガゼルの紹介状じゃねぇか。アイツが紹介状を書くとは珍しい、確かにお前らいい面構えしてんな。ちょっと待ってろ、アグナ様に取り次いでくる」
すんなりと話が進んだぞ。
うん、信じてなかった訳じゃない。ちょっとテンションの起伏が激しい人だなって思ってただけで。
名前すら聞くのを忘れていたが、あの店主はガゼルというらしい。
用事が済んだら帰りにまたお買い物に寄ろうかな。
しばらく待っていると怖面のドワーフが戻ってきて、建物の中に入るよう言われた。
上手く取り次いでくれたらしい。
建物の中は外の形状と同じく、かなり入り組んでいる。
下手すりゃ迷子になりそうだ。
壁には技術を自慢するかの如く、立派な武具や道具などが沢山飾られている。
やがて、いかにもボスがいそうな雰囲気を放つ扉の前に辿り着いた。
「アグナ様がお待ちだ、入るといい」
そう言いながら怖面のドワーフが扉を開けてくれた。
扉の向こうに待ち構えていたのは――
「テメェらか、勇者を自称するのはよ」
鋭い眼光を放つドワーフが俺を睨みつけて、そう口にした。
どこかオスヴァルト皇帝陛下に似たカリスマを感じる。
おそらく、上級の心象魔法を使うことができるのだろう。
あれ、ちょっと威圧してきてない?
勇者を自称してるとか言ってるし、話はちゃんと通ってたんじゃないのか?