136 ドワーフの始祖
「どうした、旦那。魂が抜けたような顔になってるけど大丈夫か?」
「だ……大丈夫も何も、コレ、本物の聖剣カラドボルグか……? しかも折れてやがる! 一体何しやがった! いや……それ以前に……アンタは……まさか?」
ドワーフの店主は唖然としたり、怒ったり、また驚いたりと表情が忙しい。
ヒューヒュー苦しそうだったので、リンシアが店主に治癒魔法をかけていた。
「なあリンシア。今更かもしれないけど、正体って明かしても大丈夫かな」
「今更ですけれど、よいのではないでしょうか」
もし駄目なら潜伏している密偵が即座に止めにきているはずだ。
四六時中、俺達の行動を監視しているみたいだし。
「彼女はニーナ。聖剣カラドボルグの持ち主で、現代の勇者だよ」
「んなこたぁ見りゃわかる! 俺が聞きたいのはどうして聖剣カラドボルグが折れてんだって話だ!」
そんなに感情的になるとまたヒューヒューするぞ。
ひとまず、どうしてかこのドワーフの店主は聖剣のことを知っているみたいなので事情を説明していく。
魔王が復活し、各地に魔精霊が現れ、その戦いの末に聖剣が折れてしまったことを説明すると、店主は難しい顔をしながらポツポツと喋りだした。
「聖剣カラドボルグ。鉱山を開拓したドワーフの始祖、ドグマ様が打ったものだと伝わっている」
ほほう?
聖剣を修復する人物どころか聖剣を打った人物の名前が出てきたぞ。
なんでも、そのドグマという人物はドワーフの中で神のように祭り上げられているらしい。
聖剣を打ち、勇者に授け、魔王がいなくなった世界で鉱山を開拓し発展させた物凄い人物であったと。
もちろん今は寿命で死んでしまってるけど、子孫は今もこの街に住んでいるとか。
これはかなり有力な情報なんじゃないのか?
聖剣を打った人物の子孫であれば、アーネリアフィリスに力を授けられた人物である可能性が高い。
のではないかと思われる。
確認してみるまではわからないけどね。
「アグナってドワーフがいる。今、この鉱山を取り仕切ってるヤツだ。そいつなら聖剣を打ち直せるかもしれねぇ」
「そのアグナって人は、ドグマ様の子孫かなにかか?」
「そういうこった。普通、余所者はアグナに会えねぇ、武具を売る相手を絞ってるからな。だが、俺が紹介状を書いてやる」
「助かる」
どうもアグナという人物は一見さんお断りらしい。
聖剣どうこうの前に追い払われるから、まずは招待状を持って行けと。
こう見えて店主はドワーフ鉱山でもかなり有名なんだとか。「俺に客引きされたことを誇りに思うといい」などと申しておらてた。