131 そんなことするからモテなかったんじゃ
しっぽりしっぽり、あの後リンシアも帰ってきて乱戦となった。
魔導車で移動する間に溜まっていたものをすべて解消したのか、みんな満足そうな表情で自室に戻っていった。
さて、夜も更けてきたがもう少し読書の続きをしよう。
さすがに、本に書かれている通りの術式すらうまく扱えないのは悔しいからな。
読み進めることで、何かしら打開策が見つかる……は……ず……。
ページを開くと、そこにドラトニスの走り書きを見つけた。
『俺のことだから、そろそろ一番最初に書いてあった術式を試していることだろう。で、死にかけておめおめと帰ってきたと。大聖女のありがたみを思い知ったか? 来世の大聖女がどんな人物か知らないが、大切にするんだぞ』
おうおう、随分と煽ってくれるではないか俺よ。
そう言われると逆に火がついてくる。
俺を治癒してくれたのは大聖女であるリンシアではなく、勇者のニーナであったが。
安心したまえ、リンシアは俺の女で大切にしておりますよ。
どうだ、悔しいかドラトニス!
…………。
ページをめくると、さらに走り書きが書いてあった。
『ちなみに一番最初の本に記した“精霊化魔法”は俺の考えた魔法理論の中でもかなり高難度のものになる。ぶっちゃけ一人で構築するのは無理といってもいい。実用書を読んで、来世ではモテまくっていると思われる俺に対して、ささやかな嫌がらせだ』
ドラトニス、性格悪くない?
だからモテなかったんだよ。
もっと人に優しくするべきだ、今の俺のようにな。
いや、学んだからこそ、生まれ変わって今のような性格になったのだろうか……。
次のページからは、また魔法理論が記述されていた。
それも、精霊化魔法に対しての詳しい発動方法についてだ。
最初から書いとけよ! と思わないこともないが。
多分、これはドラトニスからの忠告だ。
うぬぼれるなと。
自らの力を過信すると痛い目をみる。
魔精霊シルフィードの時も、魔精霊ウンディーネの時も。
一時は優勢かと思われたが、急な隙を突かれてヒヤッとした。
また同じことを繰り返さない為に、ワザと俺に精霊化魔法を失敗させたのではないだろうか。
もしかすると本当に嫌がらせだったのかもしれないけど。
でも、ちょっと目が覚めた。
本を読めば勝手に強くなれるだなんて思ってはいけない。
過去に感じたドラトニスの悔しさと、そして、今度こそ世界を平和に導いてやると意気込んで。
着実に力を付けさせてもらおう。
『追伸。精霊化魔法の発動には闘戦士の協力が必要不可欠だが、ご褒美をあげるのを忘れないように。多分、来世でも肉が好物だ、高級な肉を与えたらそれ以外食べない、破産しそうだ。ミミーは怖いぞ、覚えてないかもしれないがな』
ドラトニスよ、一体何があったというのだ。
急に不安を煽るなよ。
確かに魔法理論の続きを読んでいると、闘戦士……リリーの協力が必要であることがわかる。
ご褒美をあげるのを忘れたらリリーはしつこい、逃がしてくれない、満足するまで開放してくれないのだ。
ドラトニスはかつての闘戦士ミミーに、性欲ではなく、食欲でよほど困らせられたのかもしれない。
肝に銘じておくよ、ドラトニス。