130 デザートとは
「へ、あれ、気持ち悪くならない……?」
そうであろう、転移魔法の術式にアーネリアフィリスから授かった召喚魔法術式と、ドラトニスの魔法理論を組み合わせることにより、完璧な転移魔法が完成したのだ。
これで転移酔いを引き起こすことがないどころか、消費魔力を極限まで抑えることができるので、ポンポン飛ばしまくりだ。
もちろん、故意に転移酔いをさせることもできる。
敵を転移させて戦力を削ぐには便利かもしれない。
はてさて、拠点にいた密偵に状況を確認してみるも、原因は不明だそうだ。
今までこの地域であれほどの揺れが起きたことは無く、何かが起こっているのは確実だろうが情報がない。
魔王の仕業……だと決めるけるにはまだ難しいか。
ひとまず、各自部屋で待機しながら密偵が調査を行うのを待つことにする。
部屋に戻ろうとしたら満腹になるまで食べていたリリーに捕獲された。
少しお腹がポッコリしている。
「クンクン。アレク、発情のニオイ。デザート」
「リリー、まずは落ち着きたまえ」
ニーナに始動させられたマグナムを嗅ぎつけたようだ。
何がデザートだ。
ナニを食べるつもりだ。
食べるならせめて部屋の中で食べなさい、ここは廊下だ。
待ちたまえ、ここで脱がそうとするんじゃない!
転移魔法を発動させ、即座に部屋に戻る。
「あー! 戻ってきた! ちょっとアレクシス、どんだけ強く結んでるのよ、コレ! 全然外れないんだけど!?」
戻るや否やアンナが叫んでいた。
禁術魔法の練習に着いて来ようとしたから、部屋に拘束しておいただけだ。
ニーナならともかく、アンナは一般人で魔法すら使えない。
危険に晒すわけにもいかないので、かなり強力にベッドに縛り付けておいた。
強い揺れで小物が落ちたりしているが、家具は倒れていない。
アンナに怪我もないようで一安心だ。
と、思っていたら俺の部屋の扉が勢いよく開かれた。
というか扉が飛んだ。
「アレク、逃がさない。じゅるり」
「逃がさないじゃない、部屋を壊すな。扉を直しなさい」
「ん」
リリーが外れてしまった扉を入り口に立てかけた。
あれで直したつもりか……?
後で密偵に修理してもらおう……。
って、気が付けばリリーが俺の真下にいた。
同時にマグナムが世界に解放される、守るものを失ったマグナムは――
「はむっ」
容赦なく捕食されてしまった。
「ちょ、いきなり何やってんのよ! まって、わたしをこの状態で放置したままおっぱじめようっていうの!? 待ちなさいよ! え……すご……。ゴクリ……」
以前、転移魔法で逃げようと術式を構築していたら腹部を殴られたことがある。
決して逃がさないと。
先ほどは部屋に転移しただけだから見逃してもらえたけど、今転移魔法を構築しようものならハラパンを喰らったうえでデザートを搾り取られることになるだろう。
ここは大人しく、されるがままだ。
「あの、さ。えーっと、わたし、なんだか熱くなってきちゃったなー。縛られて動けないから、脱がすの手伝ってほしいなぁなんて」
「アンアン。アレクにハメて欲しいなら、そう言えばいい」
「ちょ、アンアンって変なあだ名つけないでよ!? べべべ、べつにそういう訳じゃなくって……というか、いつまでアレクシスを独占するつもりよ!」
あまり放置しすぎるのも可哀そうだし、アンナも出来上がっているようなので。
さて、俺もいただきますとしよう。
余談だが、壊れた扉の隙間から、ニーナが覗いていた。
覗き癖は治らないようだ。