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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第一章
13/200

013 その頃、植民地予定地では

 アレクシスが魔精霊イフリートを討伐してから数日後。

 王国の中心部、王都に存在する城にて緊急会議が開かれていた。


「見たこともない生物が出現したというのは本当か」

「はい、国王陛下。各地にて目撃情報、死傷者が出たとの報告があがっています」


 会議室の最奥には国王陛下が座り、その周囲には政治に関わる家臣や生物学者、報告を行う文官が着席していた。


「被害のほどは」

「数が多く、把握しきれていません」


 豪勢な装飾が施された会議室に重苦しい空気が流れる。


「王国兵と一部の魔法使いが事態の収拾にあたっていますが……全く歯が立たないとのことで……」

「一体何が起こっている」

「どうにかならんのか」


 文官の報告に家臣たちが声を荒げた。


 王国の各地にて未確認生物が突如発生し、怪我人や死者が複数出ていた。

 突然の事態に王国はパニックに陥っている。


 その未確認生物というのが、復活した魔王から流れ出す邪悪な魔力により生まれた魔物だ。


「報告された特徴からするに、その生物はかつて魔王が酷使していた魔物に一致すると思われます」

「魔物だと? 魔王は遥か昔に滅びたはずだ、勇者の活躍によってな」


 生物学者の発言に、議論はヒートアップしていく。


「ならば何だ、この騒ぎは復活した魔王が引き起こしているとでもいうのか。バカバカしい」

「魔王の仕業でないのであれば、誰の仕業だというのだ」

「帝国の仕業では? 平和な時代に、あの国はよくない噂が絶えん」

「この状況で何が平和だ」


 言葉が入り乱れ、もはや収集が付かなくなりそうになった瞬間、


「――静まれ!」


 国王の一括により、会議室は静けさを取り戻す。


「まずは報告を整理し、被害の多い地域に王国兵を送り人命救助にあたれ。未確認生物の情報を集め、対策を立てるのだ」

「承知いたしました」

「先ほど、生物の特徴が魔物に一致するという意見があったが。本当か」


 国王陛下の言葉に、全員の視線が生物学者に集まる。


「はい、確定はできませんが。緑の肌をした小鬼、ゴブリン。その上位存在と思われるオーガ。黒い毛並みを持つ巨大な獣、ウルフなど。過去に魔王が酷使していたと歴史書に記される魔物の特徴と一致します」

「それらを滅するにはどうすればいい」

「王国兵を用いて数で抑え込むか……今は失われた上級魔法を用いるしかないかと」


 会議室に、さらにどんよりとした空気が流れる。

 魔王という驚異がおらず、平和な時代に兵士になりたがる者は少ない。

 数で抑え込む作戦は不可能であった。


 さらに、用いられる魔法は戦闘に特化したものから、文明の発展に特化したものへとシフトしている。

 王国に住む人間は使えたとしても中級までであり、魔物に太刀打ちするには火力が足りない。

 上級魔法を使える者など一人も居なかった。


「帝国に救援を要請するのは?」

「あんな多民族集団に救援だと? 王国民としてのプライドはどうした」


 王国は人間至高主義である。

 人間の他に獣人やエルフ、ドワーフなどの他種族が多く住まう帝国と仲が悪い要因のひとつだ。


「もしもこの騒ぎが魔王の仕業だと仮定した場合。それは勇者の力が必要ではないのか?」


 再び、国王陛下の言葉が全員の注目を集めた。


 勇者とは、世界に平和をもたらした絶対的な存在である。

 物語として語り継がれ、この世界に生きる者なら知らない者はいない。


「勇者は魔王を滅ぼすほどの力を持っていた。数年前、この国で勇者の生まれ変わりだと言われた子供がいたはずだ」


 その言葉に、会議に参加しているグランドル伯爵の顔が一気に青くなる。


「グランドル伯爵、確か大金をはたいて引き取ったのではなかったか?」

「はっ。その通りでございます……が、アレクシスは初級魔法すら使えない無能でして……」

「無能かどうかはワシが決める。膨大な魔力を秘めていたというのは事実なのだろう?」


 みな、国王陛下とグランドル伯爵のやりとりを静かに見守った。


 膨大な魔力を持ちながら、初級魔法すら使えないアレクシスの話は王国で有名である。

 いつまでたっても成果をあげないので、大金を払ったグランドル伯爵を憐れむ者もいたほどだ。


 が、もしかすると魔王が復活したかもしれない、という状況では話が変わってくる。

 本当に勇者の生まれ変わりであるのなら、状況を打破できる可能性があるかもしれない。


「アレクシスをここに連れてくるのだ。話を聞きたい」


 グランドル伯爵は額に大粒の汗を流した。

 なにせ、数日前グランドル伯爵は魔法が使えると嘘をついたアレクシスを追放し。

 ついカッとなって、引き取った際の書類も全て焼却してしまったのだから。


「いや、しかし……」

「まさか出し惜しみするのか。この緊急事態に及んで」

「そういうわけでは!」

「では、すぐに連れてくるのだ」

「かしこまり……ました……」


 グランドル伯爵は魂が抜けたような表情になって返事をした。

 既にアレクシスが国内に居ないことなど、この場にいる者は誰も知らない。


 会議の内容が収拾に向かい、解散しようとした瞬間、


「――緊急事態です!」


 勢いよく会議室の扉が開かれ、入ってきた文官がそう叫んだ。


「何事だ」

「王都上空に……“ドラゴン”の存在が確認されました!」

「ドラゴン……だと……?」


 会議はさらに混沌を極めた。

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