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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
129/200

129 人気のないところで……

 聖剣が折れてしまっている状況で、もし第五柱・魔精霊が現れたとしても対処できるようにしておきたかったのだけど。

 なかなかどうにか、簡単には強くなれないらしい。

 発動する為の魔力は足りていた、けどそれを完全に構築することができなかったという感じだ。


 ドラトニスはこんな複雑な術式をどうやって構築したのだろうか。

 まさか、理論だけ書いて実践しなかったなんてことはないだろうな?


 精霊化魔法だけでもコントロールを失い死にかけたのに、聖剣と同様の火力を出すにはそれを維持してさらにオリジナルの禁術魔法を放つ必要があると。

 魅力的な内容ではあるが、凄まじく高い壁が聳え立っているように思う。


 考えを巡らせながら、よっこらしょっと立ち上がる。


「アレクシス、大丈夫なの? まだ無理しない方が……」

「大丈夫、ニーナが治癒魔法を使ってくれたからね」


 この通り、死の淵に瀕したけど今はピンピンしている。

 死ななければどうということはないのだ。

 自力では治癒できないから、助けてくれたニーナにはホントに頭が上がらないけど。

 横に並ぶつもりが、助けられてしまった。

 自分の非力さをとても実感する。

 こんな所で躓いていてはだめだな、もう一度本を読み直して復習しよう。


「ひとまず、今日の練習はこれで切り上げて拠点に戻るよ。このまま続けてもまた死にかけるだけだろうからね」

「うん、わかった。はい、おいでアレクシス」


 ニーナが俺に背を向けて、ポンポンと腰を叩く。

 え、なんだそのポーズは。

 こんな人気のないところでお尻を突き出して。

 襲えとでもいうのか?


「あの、ニーナ。何をしてるんだ?」

「え、あ、その……アレクシスがつらいかなって思って」


 俺のマグナムは今、そんなにつらくないぞ。

 朝までしっぽりだったから。

 いや、うん、そんなお尻を向けられたままだと平時とは言い難い状況になるかもしれないが。


「そういうのは止せ、仲間であるニーナにソレを頼るつもりはない」

「なっ……。仲間だからこそ、こういう時こそ頼ってもいいんだから!」


 いやいや駄目だろう。

 まだお互いの気持ちすら理解しあえていないというのに。

 引きこもりだったから分からないかもしれないが、順序はしっかりと踏んだ方がいい。


「とにかく、帰るぞ」

「あ、まって、せっかくアレクシスと触れ合うチャンスなのに!」

「ん、チャンス?」

「え、あっ、今のは違うくて……! あの、その、まだ本調子じゃないかもしれないから、おんぶしてあげようと思ってただけ!」


 …………。

 おんぶ?


 何か壮絶なる勘違いをしていた気がする。

 いや、うん。

 そりゃおんぶと言わずに、可愛らしいお尻を突き出してポンポンと腰を叩いていたら誘っているようにしか見えないだろう。

 今のは俺も悪いと思うが、ニーナも悪いと思うぞ。

 というか、チャンスって。

 何を企んでいるんだ。


「気持ちだけは貰っておくよ。でもほら、この通り歩いて帰れそうだから」

「あうぅ……で、でも……」


 あわあわと涙目になっているが、今おんぶしてもらう訳にはいかない。

 人気のない場所で美少女に誘われたと勘違いした状況。

 表面上の平常は保てているが、ローブの中のマグナムは始動している。

 このままおんぶされれば、ニーナの腰部にマグナムが接触してしまうのだ。

 それはいけない、それこそ大変危険だ。

 男は敏感なんだぞ。


「とにかく、自分でできることは自分でやるし。ニーナにしかできないと思ったら、その時はちゃんと頼らせてもらうよ」

「うぅ……わかった。約束」

「ああ、約束だ」


 ふう、なんとか納得してもらえたようだ。


「それじゃあ、一緒に拠点まで戻――」


 刹那、ズゥンという地響きと共に大地が揺れた。


「ふわっ、ふえぇっ!?」


 地震か?

 かなり強い揺れだ。

 ニーナを引き寄せ、即座に結界魔法を展開させた。

 いつのまにやらノータイムで結界魔法を展開できるようになっているあたり、ちゃんと成長はできているのだと実感できるが。

 それはともかく、この揺れはなんだ。


 しばらくすると揺れは収まった。


「怪我はないか?」

「う、うん……大丈夫。アレクシスが守ってくれたから」


 ……トゥンク……。

 してる場合じゃない。

 超絶美少女スマイルだけど、状況を把握する方が先だ。


「歩いて帰ろうかと思ったけど、今すぐ戻ろう」


 そう言って、転移魔法陣を展開させる。


「あ、ちょ、まって! 転移するぐらいなら歩いて帰るから!」

「残念、もう発動した」

「ふえぇぇぇぇぇ――!」


 転移酔いを恐れているようだが、安心したまえ。

 ちゃーんと改良は済ませてあるからな。

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