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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
128/200

128 俺が聖霊に……なれなかったよ

 気を取り直して、ドラトニスの考えた魔法理論だ。

 ニーナが少し離れたところに移動し、結界魔法を展開したので術式の構築を開始する。


 一番初めに書かれていた精霊化の魔法だ。

 肉体強化を昇華させた理論とのことだが、もはや肉体強化の面影が残っていない。

 魔改造もいいところである。


 じっくりと、間違えないよう、術式を構築していく。

 普段使用している禁術魔法をより細分化した状態での再構築。

 そこに新たな理論を加え、魔力に流れを加えていく。

 本当に複雑な理論だ。

 頭がフル回転しているのがわかる。


「あの、アレクシス……鼻血出てるよ……? 大丈夫?」


 ニーナが何か言ったようだが、耳に入ってこなかった。

 今、積み上げている術式で頭がいっぱいだ。

 普通に考えていては絶対にたどり着かない禁術の極意――、構築していてわかる。

 ドラトニスは神にでもなろうとでもしていたのか?

 今、発動しようとしている魔法はアーネリアフィリスから授けられた禁術魔法よりもかけ離れている。


「――――――」


 全能が、俺の中に入り込んで来るのがわかった。

 術式が繋がり、召喚魔法と肉体強化、それぞれが混じり合った精霊化魔法が発動する。

 熱く燃えたぎる、凄まじい力。


「ぁ…………」


 聖精霊サラマンダーがそこにいた。

 俺の召喚した力の一部ではなく、神の世界に存在する本物のサラマンダー。

 それが、今俺の――――――


「アレクシス――――!!」


 なっ……はっ!?

 全身が燃えている、痛い、マズイ、なんだ、何が起こってる。


「今助けるから!」


 そう叫ぶニーナの声が聞こえた瞬間、大量の水が降り掛かってくるのがわかった。

 ジュワッという音と共に、炎が消え、周囲に蒸気が立ち込めた。

 そう思われる。

 全身が痛い、前が見えない。

 何が起こったのか理解が及ばなかった。


 音が、遠のいていくのがわかる。

 やべ、これ、死ぬんじゃ…………


「アレクシス! アレクシス――!」


 急激に聴力が回復してきた。

 全身の痛みも引いていく。

 目を開けるとボロボロと涙を零すニーナの顔と、治癒魔法と思われる緑の光が溢れていた。


 ニーナが治癒魔法をかけてくれたのか。

 さすがは全系統に適正のある勇者だ。


    ◇


 どうやら、精霊化魔法を用いたことで死にかけたらしい。

 自分の皮下組織に聖精霊サラマンダーを召喚しようとしたのだが、ニーナ曰く突然俺が発火したそうだ。

 術式はうまく構築できた……と思ってたんだけど、後半はどうも怪しかった気がする。

 あまりにも複雑すぎて頭の中で処理しきれなかったようだ。

 結果、コントロールを失った魔法が自らの肉体を焼いたと……。

 ニーナがついてきていなかったら本当に危なかったかもしれない。


 もともと着ていたローブが燃えて全裸になってしまった。

 泣きながらチラチラ見るんじゃないよ、ニーナ。

 転移魔法で予備のローブを取り出して身につける。

 並大抵の炎じゃ燃えない大魔法使いのローブを身に着けてたんだけどな。

 聖精霊サラマンダーの炎ともなると、耐えきれなかったらしい。


 うん、見事に大失敗であった。

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