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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第三章
121/200

121 アレークッシスーと秘密の部屋

 さて、久々に俺に与えられた帝都の屋敷に戻って来た。

 せっかく与えられたのにほとんどこの屋敷で暮らしてないなぁ。

 勿体ないことこの上ない。


 というのは置いといてだ、俺は今からこの屋敷のとある場所に向かう。

 断じてスヤスヤと眠るリリーと転移酔いで気持ち悪くなっているアンナのいる部屋ではない、無抵抗な二人を襲うつもりはありません。


 廊下の途中で立ち止まり、術式を構築して壁に手を触れる。

 直後、何も存在しなかった壁が動き出し、地下へと続く階段が現れた。

 うむ、思い出した記憶通り、この屋敷には隠し部屋があるようだ。


 大魔法使いドラトニスが残した隠し部屋が。


 そう、俺に与えられたのは、かつての大魔法使いドラトニスが使用していた屋敷を増築改装されたものだ。

 断片的だけど、ドラトニスだった時の記憶が蘇り、隠し扉を作り上げたことを思い出したのである。


 蘇ったとはいえ、俺という人物にドラトニスの記憶を植え付けられたみたいな感覚で、何だが変な気分である。

 知らない人の記憶があるような、そんな感じだ。

 けど、紛れもなく俺であったことは間違いない、そう断言はできる。


 ランプで灯りを確保しながら、分厚い埃の積もった階段を下っていく。

 上の屋敷は綺麗だけど、地下は誰も手入れしていなかったのかボロボロだ。

 階段を下りる度、ギシギシと嫌な音が鳴る。


 やがて、最下層に到着すると、朽ちかけた扉が存在した。

 扉を開き、中に入ってみると……。


「これはひどいな……」


 もはや廃墟であった。

 じめっとした空気が滞留しており、なんだかカビっぽいものも生えている。

 まあ、かなりの時間が経過したんだ。

 この部屋がまだ残っていたということのほうが驚きである。


 ここは、ドラトニスが使用していた研究部屋だ。

 いずれ復活する魔王の対策を行うための。


 今の俺の魔法研究は、ここでドラトニスが行っていた研究の延長線上でもある。

 とはいえ、記憶は完全に蘇っている訳ではないので研究内容は思い出せていない。

 ここにある研究資料を読めば、強くなれるヒントを得られるかもしれないと足を運んだ訳だ。

 まあ、諦め癖のあったドラトニスにそこまで期待してるわけじゃないけど。


 部屋はボロボロだけど、何故か本棚とそこに収納されている本は綺麗なままであった。

 魔法が施されているのだろうか。

 様々な魔法理論のタイトルが書かれた本がズラリと……まて、なんだこの本は。


『全大魔法使い必見! 気になるあの娘を振り向かせる5つのテクニック ~禁術編~』


 明らかに一冊だけ魔法理論関連ではない本が混じってるんだが?

 他の本は地味な色なのに、この本だけめちゃくちゃ目立つピンク色だ。

 いや、うん、好奇心に負けたわけじゃない。

 ほら、別に俺にはリンシアもリリーもアンナもいるし、愛を育めているし?

 禁術編ということは、他にもシリーズがあるのだろうか……。

 

 というか、全大魔法使いって、大魔法使いは俺しかいないだろうが!


 いや、うん、ちょっと好奇心に負けた。

 やるな、ドラトニス、侮ってたよ。

 手に取ってみてみると……これ、結界魔法か……?

 本の表紙に魔方陣が刻印されている。

 魔方陣の構造はどう見ても結界魔法の応用だ、物を保存するという特性を追加して術式を作り上げたのか?


 いや、なんだこれ……こんな術式見たことがないぞ?

 アーネリアフィリスに授けられた魔法の応用ではない……ドラトニス独自の魔法理論……?


 ハラリと本をめくる。

 冒頭に書かれていた文字は。


『俺なら一番最初にこの本を手に取ると思ってたよ。どうせ生まれ変わってもモテてないんだろ? わかるよ、その気持ち、俺自身だし』


 なんかちょっとイラっとした。

 けど残念、今の俺はモテモテなのでね。

 ドラトニスとは違うのだよ、ドラトニスとは。

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