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禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第二章
111/200

111 第四柱・聖精霊ヴァルキュリア

 柔軟性を付与された結界魔法が重力によって落下する俺の身体を受け止めた。

 死んではいない。

 俺はまだ、死んでいない。


 だが、いつまで生きていられるんだ?

 十分か?

 五分か?

 一秒後か?


 俺の命は今、魔精霊ウィルオウィスプに握られている。


 死ぬ。

 死んでしまう。

 死んではいけない。

 考えろ考えろ考えろ。


 魔法が使えなかった俺は必死に考えていたじゃないか。

 使えないなりに独自の魔法理論を考え抜いたじゃないか。

 考えるのは、得意じゃないのか、俺は。

 この状況を打破できる方法を————魔法を。


「ぁ…………」


 一筋の魔法理論が、俺の中で繋がった。

 ゼロの状態から第四柱・聖精霊を召喚するのは現状不可能だ。

 そこまで膨大な魔力を俺は持ち合わせていない。

 では、ゼロではなければ?


「リンシア、リリー。ちょっと無理していいか」

「アレクシス様の案なら、無理ではありませんよ」

「リリー、アレクの女」


 合意は得られた。

 次の攻撃が来るまでに仕掛ける。

 いや、ほんの少し余裕はありそうだ。


 アイツ、魔精霊ウィルオウィスプは完全に俺達のことをナメている。

 嘲笑っている。

 

 この世に具現化した瞬間に俺達を殺せたはずだ。

 それだけの力を持っているにも関わらず、いや、力を持っているからこそ、この状況を楽しんでいるんだ。


 逃がしてはくれないだろう、が、その隙を突くことぐらいできるんじゃなかろうか。


「リンシア、俺が召喚魔法を使うから、そのタイミングに合わせて魔力の肩代わりを頼む。リリーはもう一回、あの獣の姿に変身してくれ」

「わかりました」

「ん」


 各々が準備に取り掛かる。

 リンシアの魔力量がいくら膨大とはいえ、これがラストチャンスだろう。


 どうやら、魔精霊ウィルオウィスプは俺達の行動を観察しているらしい。

 都合のいいやつめ。

 そうやって笑っていられるはもうすぐ終わりだぞ。


 頭の中で繋がった術式を構築していく。

 正直、穴だらけの術式だ。

 初めて聖精霊サラマンダーを召喚したときのことを思い出す。

 人間の考える魔法理論では、どうしても神の考えた魔法理論のように美しくはない。

 だが、たとえ美しくないものだったとしても、この状況を打破できる可能性があるのならば。


 死の淵に瀕すると禁術魔法は実力以上の力を発揮できると、リンシアとであった頃に聞いたっけか。

 まさに、その通りなのだろう。

 アーネリアフィリスから授けられた禁術魔法理論を分解し、パーツを組み合わせることで全く新しい禁術魔法を使うことができる。

 本来であれば思いつかないような方法だ。

 ここまで追い詰められないと考えつかなかった方法。


 俺だけでない、リンシアもリリーも。

 準備は整った様だ。


 リリーが跳躍し、魔方陣に包まれる。

 直後肥大化した肉体が巨獣を形作り、咆哮をあげる。


 全てが予定調和であるように、俺の術式も構築が終わった。

 発動させる瞬間、消費される魔力を打ち消すように魔力が回復していく。

 リンシアのタイミングもバッチリである。


 魔精霊ウィルオウィスプに向けて跳躍する巨獣化したリリーの目の前に、真っ白に光り輝く超絶巨大な魔方陣が展開した。


 魔方陣を潜り抜けたリリーは————、


『RYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA————————————ッ!!』


 その姿を昇華させ――“第四柱・聖精霊ヴァルキュリア”がこの世界に召喚された。

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