表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁術の大魔法使い  作者: うぇに
第二章
108/200

108 魔剣フラガラッハ

 状況だけを見れば、一方的な虐殺、その一言だ。

 二体の聖精霊に翻弄され、魔精霊ウンディーネは傷ついていく。

 まあ、即座に治癒してるみたいだけど。


 魔精霊ウンディーネを葬るには強烈な一撃を与えなければならない。

 すなわち、明確な隙を突かなければならないということだ。

 いくら聖精霊二体といえど、魔精霊を一撃で葬るには溜めが必要だ。

 ウンディーネが元気な状況ではその溜をするタイミングを確保できない。

 そう、ボコって魔力を減らし、殺るのだ。


 攻撃を受けながらも魔精霊ウンディーネは藻掻き、海底をどんどん深く掘り下げていく。

 俺の召喚した聖精霊もそのままだったら、さらに悲惨なことになってただろうな。

 この周辺の地図が変わってしまう。


 事実、過去の勇者と魔王の戦いで地図が変わった場所もある。

 その名残が今も深く爪痕を残しており……地味に観光地となっていたり。


 俺の先代の大魔法使いであるドラトニスは、術式にアレンジを加えていなかったのかもしれない。



「アレク」

「どうした、リリー」

「あれ、なんだろ」


 リリーが指さしながらそう言った。

 指の先に視線を向けてみると——、魔方陣……?

 青黒い魔方陣が宙に浮かんでいた。


 何だ、あれは、いつのまに?

 誰が用意をした?


 俺が発動したものではない、つまり聖精霊が使用したものではない。

 もちろんリンシアやリリーでもない。

 ということは。


『ル゛ア゛ア゛————』


 考え得る可能性の対象に視線を向けた瞬間、俺に向けて魔精霊は笑みを零していた。


 刹那、魔方陣が発光する。

 そこから出現したのは漆黒の剣。

 黒いオーラを纏った剣であった。


「あれは……まさか魔剣ですか? そんな、どうして……」


 リンシアがそう言った直後。

 剣は、俺達に向けて勢いよく射出させた。


 ————マズイ。

 魔精霊ウンディーネが攻撃を受けながらも魔法を準備していた!?


 そして飛翔してくる剣は途轍もなく巨大だ。

 人間サイズではない、巨人が持つような剣だ。

 切り裂かれる以前に潰される!


 即座に術式を構築した。

 間に合うか。

 いや、間に合わせなければ————死ぬ。


 巨大な漆黒の剣が迫り、結界魔法をいとも簡単に砕いた。

 鋭い剣先が俺の目前に到達したところで————、ふっと視界が開ける。


「間に……合った——」


 視界が明滅した。

 一気に魔力を消費したので身体に力が入らない。


 巨大な漆黒の剣が到達する寸前、強引に転移魔法を発動させて飛ばした。


 かなりギリギリだった。

 下手したら魔力不足で死んでたぞ。

 いや、何もしなければ死んでたので、やらなきゃいけなかったんだけどさ。


 そして、転移させた剣は。


『ル゛……ア゛ア゛……』


 魔精霊ウンディーネの腹部を貫いていた。

 即席転移だったので、うまく飛ばせるが不安だったが、うまくいったらしい。


 しかし、今しがた魔精霊ウンディーネが展開した魔方陣。

 あの術式はどう見ても転移魔法であった。


 そして漆黒の巨大な剣の特徴。

 あれはどう見てもリンシアの言う通り魔剣であると思われる。


 帝国に残された資料に載っていたものだ。


 第四柱・魔精霊が使用していたとされる“魔剣フラガラッハ”だ。

 勇者の持つ聖剣カラドボルグに匹敵するとも記されており、かつて聖剣と魔剣がぶつかった際は空が割れたとも。


 それを、魔精霊ウンディーネは召喚したとでもいうのだろうか。

 確実に俺達を殺そうという魂胆で。


 第三柱が、第四柱の武器を使った。


 以前の勇者の時代では考えられないことが起こっている。

 すなわち、魔精霊シルフィード戦の時と同じように。

 魔王による干渉である可能性が高い。


『ル゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛√﹀╲_︿╱﹀╲/╲︿_/︺╲▁︹_/﹀╲_︿╱▔︺╲/————ッ!!』


 魔精霊ウンディーネが腹部に刺さった魔剣を強引に引き抜き、ブンブンと振り廻す。

 そのたびに傷口からどす黒い血液をまき散らした。


 先ほど魔剣を召喚したことにより、もう治癒する魔力が残っていないのだろう。

 俺達と刺し違えるつもりだったのか。


 自分の命を犠牲にして、本気で俺達を殺すつもりだった。

 ああ、シルフィードの時と同じだ。

 魔精霊ウンディーネも死ぬ気で世界を滅ぼそうとしている。


 だが、その攻撃は俺達には届かなかった。


 聖精霊ジンと聖精霊リヴァイアサンの攻撃により、ウンディーネの肉体は崩壊し始める。

 もはや隙を見せるつもりは無いらしい。

 狂ったように剣を振り廻すウンディーネだが。

 やがて剣を握ったままの腕が引きちぎられ、沖の方向へと飛ばされる。

 魔剣は大きな水しぶきを上げながら海中に沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ