100 神は授ける魔法をもうちょっと選んだ方がいいと思う
「では、治癒系統の魔法の練習をしてみましょう」
「今度こそ……!」
ひとまず、リンシアにバトンタッチして、地形を変化させる心配のない治癒系統の禁術魔法の練習を行う。
次に補助系統、禁術魔法の扱いに慣れてきたところでまた攻撃系統の練習だ。
今まで戦いとは無縁の生活を送っていたのだし、段階が必要だろう。
「まずは、治癒したい人を頭に思い浮かべます。次に術式を選び、発動させるだけ。何も難しい事は無いですよ」
そう、ただ禁術魔法を発動させるだけなら難しくはない。
神より授けられた術式が頭に刻み込まれているので、それを選んで発動するだけである。
発動に膨大な魔力が必要だけど、ぶっちゃけ初級魔法を自分で構築するより楽なのだ。
先ほどのように選ぶ術式を間違えなければ問題ない。
ちなみに俺は禁術魔法の術式理論を紐解き、ちょっとアレンジを加えたりしている。
そうなると難易度は途端に上級魔法以上になるが、自分の思い描く魔法を構築することができる。
俺が敵と認知した者以外を燃やさない炎を生み出したりね。
魔法が使えなくとも研究を続けていた甲斐があったというものだ。
ニーナが目を瞑り、魔法を発動させる。
足元に魔方陣が広がった。
どうやら今度は大規模禁術魔法ではなく、小規模を選択できたらしい。
「へ、あれ、ニーナさん……? まって、その魔法はだめです!」
「え、ええ?」
何だかリンシアが慌てだした。
いったいどうしたというのだ。
俺は治癒系統の禁術魔法を使えないから詳しい術式は知らないけど……何かマズイ魔法を発動させてしまったらしい。
魔方陣の色は……ピンク色だ。
怪我を治す治癒魔法って、確か緑の魔方陣だったよな?
「だだ、誰を思い浮かべて魔法を発動させましたか!」
「あ、アレクシスだけど……」
「アレクシス様、逃げて!」
「え、俺が逃げるの?」
残念ながら逃げるには遅かったようだ。
ピンクの魔方陣からピンクの禁術魔法の光が放たれ、俺に降り注ぐ。
リンシアがあそこまで慌てるのだから嫌な予感しかしない。
一体どんな効……果……が……。
……マズイ。
これはマズイ。
自分を抑えきれない。
俺のマグナムが爆発寸前になっている。
目の前の三人に対して欲情を抑えられない。
これはアレだ、内に秘める性欲を高める類の魔法だ。
以前、搾り取られるのを恐れて逃げ回っていた俺にリンシアが密かにかけていた魔法だ。
たとえどんな草食系男子でも肉食系に代えてしまう――、禁術級の淫乱魔法だ。
神よ、どうしてこんな魔法を純粋無垢な美少女に与えてしまったのだ。
「う……ぐぐぅ……」
「あ、アレクシス……大丈夫……?」
「ニーナさん! 今アレクシス様に近づいてはいけません! 純潔を失います!」
「へ、えっ!?」
そのとおりだ、今の俺は嫌がる娘でも食っちまうんだぜ。
いやいや駄目だ、次期皇帝陛下だぞ。
無駄なトラブルを起こすわけにはいかない。
気力を振り絞り、転移魔法を発動させる。
刹那、視界が切り替わった。
「へっ、あれ、アレクシス!? ししし、仕事は!?」
俺の部屋に転移すると、何故かベッドの上で下着を丸出しにしているアンナがいた。
ほほう、また俺がいない場所で、俺の服の匂いを嗅ぎながらよからぬことをしていたな?
だが、ちょうどいい。
いや、なにがちょうどいいのかわからないけど、アンナは準備万全、俺のマグナムも限界。
「アンナ、愛してる」
「あ、ちょ……と……アレクシス……んっ……」
ベッドに転ぶアンナに迫ると、快く受け入れてくれた。
いやはや、助かった。
ありがとうアンナ。
ついでに後から凄まじい勢いで追いかけてきたリリーも参戦し、大運動会が開催された。
おかげですっからかんである。