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(ほとんど説明回)
ラーメン食って一段落して、異世界?って事で何となく冒険者登録した風だが、目的はある。
異世界の食材を知らなければならない。偏見だが、ドラゴンかなんかの肉が一番旨いに決まっている。そして、そういう肉の素材はめっちゃ高級で、王族であってもなかなか手に入らないと相場が決まっている。
異世界の食材を活かしたラーメンを食うには冒険者になるのがまぁ面倒がないだろうという事だね。なったわけですよ。
「嬢ちゃん、タンタン嬢ちゃん?これからどうするんだ?」
「店主、ガリオン店主?むかし冒険者やってたんでしょ?色々と教えてくれ~」
「はぁ、行き当たりばったりで冒険者になったのかぁ。でもそういうの嫌いじゃ無いぜ。あっちの席で話そう」
「うむ、ギルドの説明?あんま真面目に聞かなかったからな!」
ギルドは大まかに中央が依頼を物色して受ける場所。
テーブルと席が並んでいて、休憩、待ち合わせ、話し合い、飲食出来る場所。
素材が解体とかされる場所。
均した地面と石畳、木床の張った運動、模擬戦なんかが出来る場所に分かれている。
テーブルのあるカフェテリアっぽい所へ行き、席に着いた。ガリオン店主がギルドカードを掲示したのを見るに、基本は冒険者でないと使えない場所なんだろう。
「はぁ、茶を二つ頼む」
「銅貨四枚になります」
前払いらしい。店側の冒険者に対する信用が無い。酒を飲むだけ飲んで文無しでした~とか困るもんな。衛兵あたりに付きだそうとして、それでできあがった腕っぷしの立つ冒険者が暴れたら手に付けられんだろうし。
「まぁタンタン嬢ちゃんの場合は、冒険者としてある程度自由に動ける身分。迷宮や未開の土地、危険地域なんかに入れる権利、魔物、魔獣を狩れる力、その素材、報酬を物に出来る地位と財力を維持するってことだな。分かるかい?」
「力で成り上がり、強者となれって事かな?」
「嬢ちゃんは外見が幼いままで長命を生きる何かの種族か?そう、要約するとそういう事だな」
「ドラゴンって居るの?」
「居るぞ。強い種族について話しておこう。最強は竜種だ。――」
竜種。
紛う事なき最強の生物。知性も高く、図体も大きい。長命で頑健。戦闘になったらまず勝てない。本気の竜は並の軍隊を差し向けようがお構いなしの力。文句なしの最大瞬間火力。対抗出来るとすれば、英雄、勇者と言われる最高峰の戦力を纏めて投入するしかない。
幻想種、霊獣、聖獣などなど。
高位の妖精や精霊。麒麟やユニコーン、ペガサス。グリフォン等々。竜種と違って破壊力は無いが、特殊な能力や特性があるのものが多く,ほとんどの場合知能が高く強い。
大型種。固有の大型個体
山のように大きい亀とか、空を泳ぐクジラとか、途方も無く大きい海の生物とかそういう奴ら。普通の大きさであれば弱い魔物や野生の動物だが巨大になった動物。固有の生物であれば、だいたい名前が付いている。種で言うとマンモスの魔物、象の魔物、恐竜の魔物、クジラの魔物、他色々。でかさとは強さ。巨人も居るが、人類とは友好的。
高位の魔人種。
人型で武器を使う人類に敵対する種。魔王は魔人の高位な個体という事になる。文明も持っているのである意味で竜種より人類の脅威たりえる。人類と不可侵条約など結ばれれば亜人になる。人はいつでも身勝手なのさ。
災害種。
意思疎通が出来そうに無い、現象に近い何か。例えば太陽は決して届かない最強の何かだし、嵐や台風は抗えぬ災害だ。そこまで科学が発達してないので擬人的な扱いになる。台風の中心に強力な精霊種が居るかもしれないし。居ないかもしれない。
不死種。アンデッド全般。
陽光、光、神聖属性に弱いがそれ以外にめっぽう強い。高位アンデッドは本当に手に負えない。あらゆる生き物を自分の仲間にしようとする。生前の自分と同種を優先的に狙う。不死種からみれば、それは繁殖行為である。フィジカル的な強さが種として高い。吸血鬼は高位の魔人であり不死種でもある。
群体繁茂。スタンピード。
雑魚でおなじみのゴブリン、でも繁殖力が高いので、1000体とかに膨れあがって餌を求めて大移動など始めれば災害級の被害をもたらすだろう。アンデッドの封じ込め失敗、強い魔物の種の繁殖、迷宮の暴走、崩壊など、色々な物がある。この世の大災害はだいたいこれ。
この世界でやべー奴らは大まかにそんな感じらしい。そして、やはり竜種の肉は極上らしい。あとは幻想種もめちゃ旨だとか。マンドラゴラとか、やべー所にしか生えないキノコとか、ファンタジーならではの稀少な動植物もある。
究極の食材を追い求めるなら、この辺を狙っていけば良いのでは無いかとのこと。
冒険者ランクと制度について。
S~Hランクまである。
Hランク。
冒険者登録しているが戦闘能力皆無なランクに与えられる。高貴な身分の良いところのお嬢ちゃん(三~十歳)とかが、何かの必用に駆られてコネで登録させられた時なんかにこのランクになる。例外なので特に考えなくて良い。出会ったら貴族かな~と思って対応しておけというランク。
地位は個別にギルドが設定している感じ。
Gランク。
そこらの一般人の若い衆より弱いと判断されたらこっからスタート。登録の際、そのギルドの試験には適わなかったものの、熱意だとかコネだとかで、どうしても冒険者したい人がなる。
依頼はギルドの見繕ったお遣いの様な物しかできず、ランクが上がるのもギルドの判断。
ギルドは基本、冒険者同士の争いは勝手にやってどうぞという風潮だが、Gより上のランクがGランクと喧嘩になって殴り飛ばしたなどの場合はGランク側が有利に裁定されやすい。孤児院上がりの子どもとか、他に職が無い食い詰め者で体格が劣るだとか、普通のひ弱な一般女性などはここからになりやすい。
ギルドランクによる地位・権利は無いに等しいが、保護される立場。
Fランク。
ちょっと腕っ節の立つ若い衆。戦闘力としては平均的なゴブリンと一対一で戦って六割以上勝てるくらい。普段から喧嘩してたり、動物を殺したり解体したりしている。喧嘩慣れした人などはこの辺から登録スタート。一般人だけど雑兵働きはできる程度。人並みに健康で、武器を扱う勇気がある。動物の殺生ができる人はここから。
地位。
依頼は自分で受けられる様になり、ギルドの一般公開の資料、自由なパーティ結成・参加、ギルド口座・オークション利用、その他サービスが利用出来る様になる反面、冒険者同士の争いは弱者だからと贔屓に見るという事は無くなる。自己責任となり、上位ランクにいびられまくる辛いランク。そうは言っても新人はここからが多いし人数も多いので、ギルドは裏で保護に動いている。ギルドでは安全な依頼、パーティー、講習、安宿、鍛冶屋などをお勧めしている。
Eランク。
戦争で戦い、帰ってきた若い衆。村一番の腕自慢。魔法が使える。スキルが凄い。ガチムチで戦闘経験あり。そう言う人はこっから始まる。戦闘能力としてはゴブリンと一対一ではまず勝てる。オークと遭遇したらすぐに撤退できる判断力がある。といった強さ。
地位。
Fが強くなっただけ。ソロであればゴブリンの討伐依頼、パーティーであればちょっと遠くの森の調査依頼や害獣駆除などを受けるくらい。
冒険者ギルド管理のほとんどのダンジョンに自由に入れる様になる。なおこれ未満のランクはギルドの許可、監督が必用。
Dランク。
冒険者として熟れてきた一般人はだいたいこのランク。オークと一対一で戦って良い勝負をする強さ。冒険者として、落ち度の無い動き方ができてないとDランクにはならない。一人前の冒険者。
地位。
このあたりのランクから冒険者としての身分が対外組織に有効となってくる。傭兵、騎士団にお手伝いに行けば、足手纏い扱いはされにくいし、商人や貴族の護衛も受けられる様になる。自分の責任に置いて当座の依頼を受けることが出来る。(商人の護衛中、商人から追加の依頼をされ、その場で受諾した。など)
また、冒険者ギルドからの強制依頼の対象になる。断っても良いが、評価が下がり、正当な理由が無い事が判明した場合、ランク降格や違約金を支払わなければならないなどのペナルティーが課されることもある。
その地域の身分で言うと軍人職の末端、兵役を勤め上げた町人くらいの身分となる。
Cランク。
凡人には少々厳しいランク。一般人が昔から冒険者をし続けて、鍛えに鍛え、装備を整え、適切な才能を伸ばして三十代後半、四十代でワンチャン狙うランク。体格、才能、魔法適正、そういうのに恵まれた人は普通にこのランクになって、そして超えていく。一般人と英雄の壁とも言える。強さとしては、オークと一対一で危なげなく倒す。
Cランクパーティーが、オーガ、トロル、アンデッドの群れ、そういう相手と遭遇しても、一人は伝令として逃がせるくらいの判断力と強さ。ギルドとしては使い勝手の良い戦力。質と量の良い所。
地位。
平民あがりの騎士と同じくらい。ギルド職員としてはこのくらいのランクから戦力として頼りにしてくる。ギルド嬢と結婚できるのもこのくらいから。彼女らは目が肥えているので、Cランクだと他が良くないとニッコリと袖にされるだろう。
Bランク。
英雄一歩手前くらい。この辺から二つ名がつき始める。戦力としては騎士団長とか王様直属の衛士などくらい。凄い魔法やスキル、武器を使い熟し、高火力、大量破壊の手段を持ってくるランク。一般人、一般の兵士から見ると理不尽な強さになってくる。
地位。
冒険者ギルドはBランクからは個別に管理把握してくる。緊急依頼を頼むために宿を登録し、実際に緊急の指名依頼などが結構くる。
事後承諾は必用だが、講習を受けて認可されていれば略式のギルド職員として現地で動くことなどができる。
例えば山奥の開拓村へ周辺の魔獣討伐の任務で赴いた際、報告に無いアンデッドが居た場合、そこでアンデッド討伐の依頼を作成して近くの冒険者を招集して良い。これは強制依頼とする事も出来るが、当然拒否も出来る。冒険者ギルドの目が無いので、拒否した側に相当の落ち度が無ければ罰則は科されない。
また、実はアンデッド化の黒幕は最初の依頼主の村長だった場合、処断しても良い。ギルドの立場を行使した場合、報告書を提出しなければならない。また、ギルド本部は報告について詳細を諮問する場合がある。嘘を見破る魔道具などは当然使用され、議事録なども作成される。
人気の受付嬢といい仲になるのはこのあたり、お互い容姿、若さ、性格などを高値で売り合う感じ。でもやっぱり受付嬢は目が肥えているので上手。
Aランク。
英雄。生きる伝説。強さは幅がある。相性もあるからね。
地位。
だいたいの事が通る立場。ペーペーの男爵あたりの貴族より社会的身分は高い。自分に着いてくる千人兵団を纏める軍部の高官といった感じ。圧倒的な武力は地位となる。無事に現役を退くならばギルドマスターになることも。そうなると人気の受付嬢がだいたい奥さんになっている。このレベルは任務として受付嬢が宛がわれる事もあるし、高ランクに物を言わせて身持ちの堅い受付嬢が、と言うこともある。英雄色を好むってやつですね。受付嬢の不幸にはちゃんと手当、保証は出ますよ。
Sランク。
Aランクとは違うなっていう人達のランク。要は人外である。相性にも依るが、強力なドラゴンと一対一で渡り合えるくらいの強さ。
このレベルは何かを代償にしている場合も少なくない。失語症であるとか、性格がヤバイとか、精神崩壊してるとか、身体欠損であるとか、神に自由を捧げただとか、竜人族であるとか、国が公認した友好的な吸血鬼であるとか、悪魔が人のフリをして冒険者に興じているとか、神の化身が人になりきっているとか、そういう奴ら。異世界召喚された勇者とかもね。
地位。
冒険者ギルドとの信頼関係による。比較的話が分かる人物であれば、常備核弾頭として丁寧な扱いをされる。性格が屑で、一ヶ月に一人、見目麗しい処女を報酬に要求されてもお釣りが来るというような対応。
ただ、冒険者ギルドの運営部でSランクの危険性や有効性を天秤にかけて審議され、排除となればA、Sランク総出て暗殺、失敗すればその地域ごとでも更地にする。冒険者ギルドは大きな軍事力を持つ組織として、最低限の規律を守らなければならない。人類に仇なす存在を、国を超えた規模で排除する組織が冒険者ギルドである。
冒険者ギルド。
原則、冒険者は一般人に武力を背景とした横暴を禁止する。これは問い合わせがあった場合、調査の上で暴行を含む横暴が判明した場合は処罰の対象となる。
冒険者同士の武力を伴う諍いは、当人同士で収まる範囲であれば、冒険者ギルドは積極的にこれを関知しない。ただし、強盗、重大な窃盗、重度の暴行、殺害、常識を逸脱する不公平な契約などが問題となる場合、冒険者ギルドは規律と秩序を保つ為に介入する。
依頼システム。(略)
なんかそれっぽい感じのやつ。
冒険者ギルドと政治。
冒険者ギルドは原則として政治的、宗教的に中立とする。冒険者は同種の依頼で競合して良いが、戦争への荷担の依頼などで戦い合ってはならない。所属のギルドマスター、あるいは責任のある現場のギルド職員、あるいは最高ランクの預かりとして場を収める。
冒険者ギルド支部として、地域の属する政治団体に迎合して良いが、過度の関係は望ましくない。
原則として冒険者ギルド職員は、本部の人事には従わなければならない。
本部からの査察の他に、職員個人にギルド支部の実態調査を依頼している。ギルドの活動は監視している。
ギルドの活動に関しての不審点は、見つけ次第関係者への査問を実施する。不義の疑いを晴らせない場合でも処罰の対象となる。
その為、ギルド支部は金銭、冒険者の人事、その他重要なやりとりは経緯を含め詳細を記録に残し、透明性のある状態を保つことが重要である。
戦争、政治派閥、宗教論争、その他大きな方針に関しての本部の決定に際しては、原則として利益より人道を優先する。
軍部の一方的な蜂起、虐殺、圧政の出現、邪教の流布などに対しては抑止、事態の収拾に動く。
魔族の進行、魔物の群れの大移動、大繁殖、極度の治安悪化などに対しては積極的に介入する。
「この冒険者の手引きを見ると、そんなところだな。他にも細々とあるが、後はその時に考えれば良いことばかりだ」
「ふーん、で、冒険者プレート?カード?これは?」
「嬢ちゃんはEランクからだったな。」
プレートは各ランクの物に、個人の識別情報を魔法で刻印されたコインを後ろからプレス機で打ち込む。プレートに穴が空いているので紐を通して首から提げるのが通例。
各ランクのプレートは、
Hは白金主体の合金。真っ白に輝く。
Gは溶鉱炉に残った要らない金属で作られる。アタリのプレートもあるかも。
Fは鉄主体の黒金。ずっしり。
Eは銅主体の合金。使い始めは銅色だが、そんなに良い金属使ってないので劣化していく。
Dは銀主体の合金。長年使っていると少しくすんで良い味が出る。
Cは金主体の合金。錆びにくく丈夫。
Bはミスリル。薄青色が白銀色に合わさった色の金属。
Aはアダマンタイト。赤紫に銀色をブレンドした様な金属。
Sはオリハルコン。金色で見る角度で虹色の光が薄く反射する金属。
各ランクの金属プレートは使用している合金と指定の形状、ロゴの打刻印を守れば多少の改造が許される。高ランクは昇格に合わせて鍛冶屋に特注したりする。ギルドでIDコインの打刻の時にチェックされる。それ以降の改造は原則ダメである。
なお、昇格の時に不要となったプレートは回収される。紛失時はID変更。IDコイン、プレート再発行などで手数料が取られる。
「ふーん、これ首からかけるのか」
私はEランクのギルドカードを貰ったので、十円玉みたいな色の、曲がりのついた金属板である。後ろ側に金属が打ち込まれている。なんかのテクでID識別してるんだろう。魔法版のICチップみたいなもんだな。
穴が二カ所空いている。貰った革紐を通して首から提げた。
「うーん、その格好もどうにかしなきゃなぁ」
「むむむ」
私は今ワンピースを着ている。それだけだ。武器や防具などは一切無い。
完全に病に伏せったお母さんをなんとか助けて欲しくて小銭を握りしめて泣きながら依頼に来た幼女である。
「はよファンタジー食材へ案内しろ~」
「ふむ、」
当面の方針として、この地域になれること。街で手に入る食材・料理を確かめつつ、魔物、魔法なんかの知識を入れていく。平衡して冒険者の依頼をコツコツと積んでいき、動きやすいDランク、Cランクあたりを目指すこととなった。
ランク上昇に伴い冒険者の義務的なのが嵩んでくるが、なあなあで躱しつつ、拘束してくるなら商業ギルドなどへ転向するかなという適当な見通しとなった。
「タンタン嬢ちゃん、別にウチで働いてくれてもいいんだぞ。俺の娘は冒険者になって飛び回って滅多に帰ってこないし、なんだ、人が足りてないし。嫁も給仕はもうキツイって文芸?なんか難しい事やってるし、俺はさ、……」
熊顔でしょぼくれた顔するとすげー哀愁漂うな。ぐらっときたぜ。
「んー、じゃあ店主の家に住むわ。厨房とかも手伝わせろー。いつか真のラーメンって奴を食わせてやるよ」
「そう、そうか。コツコツやろうな」
撫でられた。こいつは良いクマさんだなぁ。